ネジ工場の荒くれ『ジョージ・デュラン』
そんな感じで5年間は金を使いまくるだけで何もしてこなかった。
ただ、ベンジャミンからの支援はあるものの、実際問題、金だけあってもつまらないので、この頃から経営者として色々な会社をやってみることにした。
さらに色々な企業に投資してみたりした結果、意外と大成功し、献金が無くとも金に困ることは無くなった。
他の家族(厳密には血の繋がりは無い)の吸血鬼連中もそれぞれ独自の金儲けをしているようで、吸血鬼にはなぜか商才があるようだった。
そんな風に仕事に精を出していると、まだまだ気持ちが晴れることは無かったものの、少しずつ人間との交流は増えてきた。
その中で出会った1人で、『ジョージ・デュラン』という18歳の人間がいた。
彼はイギリス人とフランス人のハーフで、俺が経営していたネジ工場に入ってきた荒くれ者のような若者だった。
世界的に各国の関係が微妙な時期だったこともあり、フランスであまり良い顔をされずに育ったからか、工場で働き始めた頃は手がつけられないほど荒れ狂っていた。
「てめぇのおせー仕事に付き合ってられるかよ!!」
そんな大声と同時に、巨体をひねり、剛腕を唸らせ当時のネジ工場の所長の顎を砕いた。
身長195cmで筋肉隆々なジョージから繰り出される全力グーパンを食らった所長は、大量の出荷用ネジの山へ吹っ飛んで工場中にネジの雨を降らせた。
「て、てめえ!クソガキ!!所長に何やってんだーーー!」
その様子を見ていた所員たちは皆で覆いかぶさってジョージを押さえつける。
が、その人間の山がもっこりしたかと思うと、その全ての人間を吹っ飛ばすほどの力を持っていたのだった。
「はあっ!はあっ!クソがァ……」
疲れてはいるが、苛立ちを隠さないジョージの元に俺は歩み寄っていった。
「所長のこと、なんで殴ったの?」
あくまでも笑顔で聞く。
「な、なんだよ?文句あんのか?」
突然話しかけられて少し動揺したようだったが、すぐに拳を構えて戦闘態勢に入る。
「あ、俺、この工場のオーナーなんだけどさ。別に怒ってなくて、なんで殴ったのか聞きたいだけなんだ」
「オ、オーナーだ?ずいぶん若ぇじゃねぇかよ……」
そう言いながら俺に詰め寄ってくる。
「いや、近い近い。パーソナルスペースって知ってる?」
そう言うと少し突き飛ばしてやった。
「ぐべっ!」
すると、ちょっぴり強めだったのか、ジョージは尻餅をついてしまった。
すぐに立ち上がると、ジョージは地面にツバを吐いて俺に言った。
「舐めやがって……!俺ァ、もうここは辞める!クソみてーな人材しかいねーからよ!!誰も真面目にやってねーじゃねーか!!」
「………」
俺はジョージが苛立つ理由を見極めていた。
「そんなわけだから、てめーにも一発ぶちかまさせてもらうぜェ!!」
「なに?」
「『今まで、ありがとうございましたパンチ』!!!」
ビュンッ……!
……ズバン!!
「ぐえっ!」
その瞬間、俺は受け止めようと平手でジョージの拳を掴んだ。
ーーーが、人間のパンチにも関わらず、あまりの力に受け止めることができず、俺の手ごと思いっきり顎に喰らってしまった。
その勢いのまま、工場の入り口まで吹っ飛ばされる。
空中で一回転してなんとか着地したものの、その威力はメガトン級で、顎は少し砕けていた。
俺はすぐに再生できるからいいものを、さっきの所長は病院送り確実だろう。
「はんはいへへるほはんひ、うっへん………じゃねーよ!!(犯罪レベルのパンチ打ってん………じゃねーよ!)」
俺は砕かれた顎を再生しつつツッコんだ。
「あ……あ!?」
俺の異常な回復力を見て、見間違いかと思ったのか、目をこするジョージ。
「あのさ、何をそんなに怒ってるの?みんなちゃんとやってたじゃん」
俺は瞬時に元通りになると、ジョージに向かって歩いていった。
「マ、マジかよ?人間じゃ、ないのか?」
「人間離れしたイケメンであることは間違いない」
「ヤベェぜ……」
「そうですね、とか言えよ!」
それから、俺とジョージは工場の机に座って語り合った。




