村長の老婆の真の姿と、その年齢
しばらく歩くと、コンクリートの要塞のような、『帝国軍エリアF5-3駐屯地』が見えてきた。
「サ、サタン様、あれは……」
マルタの村人の1人が駐屯地を見て顔色を変える。
「帝国軍の駐屯地だよ。あそこで配給を分けてもらう」
「え、で、ですが……」
「大丈夫だって。俺の仲間の親族が、ここを管轄している奴と知り合いなんだ」
「そ、それはどういう方で……」
「ん?まぁ色々だ」
とりあえずメイジーが労働省事務次官の娘だということは伏せておく。
食糧税などは何か陰謀が働いているようだったが、マルタの住人からしてみたら労働省が圧政を敷いたせいで自分たちが苦しんだと思うのは無理もない。
その娘がここにいるとなると、色々厄介だろう。
ーーー最悪、人質にされかねない。
メイジーも、その辺りはうまくできるはずなので、ほとぼりが冷めた頃に俺からうまく伝えようと決めた。
「あ、村長補佐さん。切り傷が……。今、治しますね」
メイジーが駆け寄ってきて、手をかざした。
「あ……お嬢さん、ありがとうございます。サタン様、この方は……」
いつも村長の隣にいるおっさんは、慣れない美女からの治療魔法に少し照れながら聞いてくる。
「あ、ああ……俺の仲間で……」
「あ、申し遅れました。私、帝国労働省事務次官アルコットの娘、メイジー・T・アルコットと申します」
「…………」
「…………」
「…………」
「なんだってーーー!?」
「言うんかい!!」
「お、おーーい!!みんな!!ろ、労働省事務次官の娘がここにいるぞーーー!!捕まえろーー!!」
「え、えーー!?なんでですの!?」
「いや、天然か!」
村長補佐の突然の号令の意味をメイジーは理解していないようだった。
その後、ひとまず村人をなだめて駐屯地に着いた俺たちは、無事に配給のカレーを分けてもらうことに成功した。
子供たちから順番にお皿によそっていく。
久しぶりに満足いくまで食べることができて、皆、うっすらと涙を浮かべていた。
村にいる時から、もう餓死寸前まで追い込まれていた状況からすると、一時的とはいえ、こんなご馳走様にありつけたことを考えれば、反乱軍に加盟して良かったのかもしれないと思った。
「いやはや……サタン様……。なんとお礼を言っていいか……」
少女のとうもろこしで一命を繋いだ村長も先ほど無事に意識を取り戻した。
そして、食事に合流し、カレーのおかわりを持ってきていた。
「う、うん」
「ガツガツガツガツ……!」
素早くかき込むとカッカッカッとスプーンを皿に打ちつける音が響く。
そしてスッと立ち上がると、カレーの鍋へ向かっていく。
「すげー食うじゃん……」
そして大盛りをよそうと、ニコリとして言った。
「4杯目ですじゃ」
そう言う婆さんは骨と皮しか無かった状態から肌ツヤがよみがえり、血色も良く、明らかに若返っていた。
しかも栄養が行き渡ることで顔立ちもハッキリしてきて、美魔女っぽく変貌する。
(90代くらいかと思っていたが80代……いや、もしかして70代か……!?)
「乙女の年齢を勘繰るのは感心しませんぞ」
「……エスパー!?い、いや、でもあまりに変貌したもんでつい……」
「ヒントならあげますぞ」
「問題出したがるタイプかい。じゃあ……80より……下?」
「下」
「えっ!?70より……下?」
「下」
「!?じ、じゃあ……65より、下?」
「下」
「下!?お前、いくつなんだよ!!」
「内緒ですじゃ〜」
「いや、65以下でその喋り方やめろ!!」
「1日で5kgは戻しますぞ〜〜!!」
「いや、減量後のボクサーか!」
そう言う婆さんはあっという間に婆さんではなくなり、ハリツヤが戻っていた。
そして、こちらにニコリと笑うと、再び鍋に向かっていった。




