婆さんを救う、吸血鬼の神速の蹴り
「そうそう。俺の要求だけどよ、お前のとこの同盟軍から『フィルディア』の連中を外してくれや。みすみす見殺しにする訳にいかねぇ」
「フィルディア……?」
俺は少し疑問に思ったが、今は話を聞くことに集中した。
「フィルディア軍を外せだと?彼らは、私に賛同して自ら志願してくれている。無理に引き剥がすことはできんな……」
「だからあんたから"切れ"って言ってんだよ。"貧しさからの解放"っていう人の心の結束はそう簡単に解けねぇ。だから"用済み"ってことで外してくれ」
どうやらデューはフィルディアという町に執着があるようだ。
「…………」
考え込むダリア軍のリーダー。
「考えてるフリしてんじゃねぇ。ぶっちゃけお前らが今やろうとしてることなんて全部めくれてんだよ」
「くっ……」
リーダーの顔が曇る。
「労働省を牛耳りたいゲイルと内通して色々やってんだろうが、帝国だってバカじゃねーぞ」
「……………」
「それに、貧乏でどうしようもなくなったフィルディアの連中を捨て駒みたいに軍に組み込むなんて……。てめえ自分が何してるかわかってんのか?フィルディアは俺の"縄張り"なんだよ」
ヒューーー!!ドンッ!
その時、デューを目がけて無数の投石が放たれた。
「ん?なんだこれ?」
デューは片手で石を弾きながら飛んでくる方向を見た。
そこにいたのはーーー。
「おいおい、何やってんだよ……」
村長の婆さんとマルタの村人たちだった。
「そ、村長!あ、あれは、バッドボブ海賊団の船長、デュー・ジョーンズだ!こ、殺されますよ!」
「わ、わかっておる!だ、だが、マルタだって戦えるんじゃ!バルドル殿!お逃げくだされ!ここは……私たちにお任せを……!」
マルタの婆さんが叫ぶ。
「ひっ……!」
その瞬間、バルドルと呼ばれたダリア軍の総司令はお礼も言わず、戦車から飛び降りて逃げ出した。
それに少しイラついた様子のデュー。
「ちっ。ありゃあ……。マルタの連中か。あいつらの村は別に俺の縄張りじゃねぇからな……。ちょっくらお尻ペンペンしてやるかい」
そう言うと、デューは拳を固めて婆さんたち目がけて飛んでいく。
「こ、ここまでかねぇ……。みんな、不甲斐ない村長ですまなかったね……」
婆さんは膝を折って祈りを捧げた。
ーーーその瞬間、俺は戦車の影から空中へ飛び出した。
そして、デューのテンプル目がけて神速の蹴りを放つ。
シュン……………。
ズダアァァァーーン!!
「っっっ!!!?!?」
恐るべき反応速度でガードしたデューだったが、突然の超威力の衝撃に荒野の岩壁まで吹っ飛び、岩山を突き破って破壊した。
「あ、あ……!あなた様は……!あなた様は!!」
「婆さん。遅くなって悪い。……めっちゃ寄り道しちゃった」
祈りながら泣き崩れる老婆。
村人たちも俺に気付き、駆け寄ってくる。
「サタン様!!」
「あ……!サタン様!!」
「サタン様だ!!うわぁぁーーん!」
「サタン様が来てくれたーー!!」
途端に村人の大勢に囲まれる俺。
その中には、以前パンとスープを渡した親子の姿もあった。
「うわぁーーーん!サタン様ー!!」
「お、おい。泣くなっての……。わかったから……」
少ししか時間は経っていないが、色々あったため久々の再会な気がする。
俺は故郷に戻ったような、少し懐かしい気持ちになった。




