おてんば令嬢達と反乱軍を止めに行く
どうやらマルタの現状は、思っていたより遥かに追い詰められていたらしい。
「ど、どうやら要求は私の"首"のようだ」
「お、お父様……」
親父が考え込むと、メイジーが不安そうな声をあげた。
「ヤバいよサタン!!これ見て!」
カトリーナが大声を出して、ポーポー公爵の目に映る動画を見せてきた。
『ただいま、独立国家ダリア軍と思われる軍隊が、帝都ピリピリムーンにある帝国労働省に向けて進軍しています。ダリア軍だけでなく、マルタ村、フィルディア町の民衆も参加しているようで、その数、およそ3000人とのことです』
アナウンサーの解説が入る。
「あ!こいつら!……くそっ!婆さん……!早まったか……!」
軍隊の中にマルタの婆さんと村人の姿を発見し、思わず声が出てしまう。
「くっ……。ここまで大規模な反乱なのに、その動きは私の耳に一切入ってこなかった。それに、帝国政府ではなく、労働省に向けての反乱?くっ……。何かがおかしい……!まさか……」
親父は何か思い当たる節があるようだったが、俺はひとまず軍に向かうことにした。
「メイジーの親父さん、俺はマルタの婆さんに話を聞いてくる。あんたも首狙われてるんだったらどこかで隠れて待ってな」
「い、いや。隠れる訳にはいかん。ここはしっかりと労働省に指示を出さねば」
この親父、やはりなかなか骨のある男らしい。
「わかった。あんま無理すんなよ」
「あ、ああ。君も」
そう言うと、俺は家から出た。
「サタン、じゃあひとまずダリア軍に向かう?」
メイジー宅から出ると、カトリーナが聞いてきた。
「ああ。今はそれが優先だ。ピッピンプンスカ教会の件は一旦後回しにする」
「よし。じゃあまずはダリア軍が今進軍しているピョンプン荒地を目指そう」
「ピョンプン荒地?」
「そう!帝都ピロピロムーンに続く広大な荒野で、ペペロニアからも繋がってるんだ」
「ここからだと軍までどれくらいかかる?」
「わかんないけど、なぜか今、ダリア軍は帝都まで直線じゃなくて、高台に向かってるみたい。だからここから直線で行ければ2日くらいで追いつけるかも!」
「それなら、アルコット家のあの馬車をお使い下さい!」
メイジーとクロエも家から飛び出してきて、家の横に停まる馬車を指差した。
「おー!それは助かる!」
俺は感嘆の声を上げた。
「それと、私も行きますわ!」
「……いやいや!」
お礼の直後、即座に否定する。
「サタン様!なぜですの!?」
「だって相手は軍隊だぞ。危険すぎる」
「いえ。私もアルコット家の娘。我が父の首が狙われている状況で黙って見ていることはできませんわ」
「いや、そうだけど……」
「それに、私は水の治癒術も使えます。サタン様に癒しの術……は必要無いかもしれませんが、村の方々がケガされた際にはお役に立てると思いますわ」
「ったく……。わかったよ。でも、危険なことはしないでよ」
「それに関しては問題ありません。私もついて行きます」
「……ああ。クロエがいるなら安心だ」
俺は少し安堵した。
親父とも知り合ってしまったし、絶対にメイジーを死なせる訳にはいかない。
「ほ、ほら!じゃあみんな行こうよ!」
カトリーナは少しバツが悪そうに行動を急かした。
「??お前、なに焦ってんの?」
「う、うるさいな!死ねよ!!マジで!!」
「い、いや、そこまで!?」
俺たちはダリア軍が進軍する荒野を目指して馬車に乗り込んだ。




