悪人と空中座談会
「ひぃぃぃぃ!!!」
落ちていく男と一緒に逆さまになりながら会話する。
「じゃあさ、君に提案があるんだけど」
「ひぃぃぃぃーーー!!!」
空中で改めて男の首を掴むと、涙でぐしょぐしょの顔に向かって話しかけた。
「今、たぶんここって空中20メートルくらいだと思うのね。だからさ、地上までの距離を"1メートルあたり野菜と米3kg"で売るよ。どう?あ、同じだけ水も付けてね」
「か、買う!!わかった!!買うよ!!……あ、で、でも……この村から回収した食糧と水は30kgなんだけど……」
1メートル3kgということは、10メートルで30kg。
残り10メートル分足りない。
「知・る・か❤️」
「じゅ、10メートルでも死んじまうかもしれねぇ!!頼む!!そ、そしたら国からピンハネした食糧が15kgある!!それ渡すから+5メートル買わせてくれ!!」
「おばあさーーーん!それでいいーーー!?」
上空から地上の老婆に問いかけると、老婆はゆっくりと首を横に振った。
………なかなか商売上手なおばあさんらしい。
「なんでだよ!!!わかった!!倍出す!!30kg出すから!!」
その言葉を聞いて老婆は両手で丸を作った。
「ふっ……。だそうだ。じゃあ下ろしてやろう」
そう言うと男を掴みながらゆっくり下降していった。
「はい。ここが5メートルくらいだね」
「い、いや、5メートルでも結構高けぇ!!!これはダメだ!!足が折れちまうかも……」
「うるせーよ」
俺はグダグダ言う男から手を離す。
すごい勢いで地面に叩きつけられた男は、うつ伏せでピクピクしていた。
「おばあさん、悪いな、勝手に決めちゃって」
着地した俺は老婆の元へ向かって言った。
「いえいえ!むしろ食糧を渡すどころか多く頂けるなんて!全てサタン様のおかげですじゃ……!ありがたや……」
「いや、それでもキツそうだからさ。普段から満足に食べられない所に、さらに搾取されてるんでしょ?」
「ええ、仰る通りで……。ここのところ雨もあまり降らず……村はもうおしまいかと話しておったところです……。今回の食糧でも足りぬほどで……」
「そっか……。まぁ頑張ってよ。それじゃ」
俺は翼で飛び立とうとしたが、老婆にガッチリ腕を押さえられた。
「お、お待ちくだされ!!まだお話が!!」
「な、なに!?」
話を聞くまで老婆は絶対に離してくれなさそうだった。