消えた父親を暴れながら探す少年
「お待たせ致しました……」
店主はそう言って怪物ウニをテーブルへゴトリと置くと、再び厨房へ戻って行った。
「こ、これか」
俺は初めて見る怪物ウニの見た目に若干不安感を覚える。
ここは異世界だからしょうがないのかもしれないが、俺がかつて現実世界で食べていたウニの色ではない。
紫と赤紫がまだらになっているような見た目で、かなり毒々しい。
さらに、割られた中身を見てみると、身の部分が緑とグレーになっている。
「っ……」
絵の具をひっくり返したような見た目の食べ物だが、これを食べるとなると少し勇気がいる。
「サ、サタン様。やはりおやめになった方が……」
メイジーが気遣ってくるが、もう後には引けない。
「い、いただきまーす!!」
自分を鼓舞するかのように食べようとしたその瞬間、店の入り口から大声が響いた。
「それを食べちゃダメだ!!!」
スプーンを口に入れようとしたまま硬直する俺。
声がした方を向くと、1人の少年がいた。
「え?でもせっかく頼んだし……」
俺は再びスプーンを口内に入れようとする。
「ダ、ダメだって言ってるじゃないか!!うわぁーーー!!!」
少年が俺に飛びかかると、俺もろともイスごと後ろへ倒れた。
そしてスプーンを取り上げ、さらにテーブル上の怪物ウニを手に取って地面に放り投げる。
その放り投げた勢いによって緑とグレーの中身が飛び散り、メイジーの高級な服に付着する。
「あらっ!!?」
「うわぁーーー!!こんなの!こんなの!!」
少年は怪物ウニを何度も何度も踏みつける。
「し、少年!よしなさい!」
クロエが止めに入ると、少年はようやく落ち着いたようだった。
「ふぅ…ふぅ…!」
「ね、ねぇ、君、どうしたの?」
子供に対してだからか、カトリーナが珍しく優しく対応する。
「ご、ごめんなさい……。俺、その……」
「落ち着いて。ね?」
メイジーが緑とグレーまみれの服のまましゃがみ、にっこり笑う。
(笑顔、怖っ……!)
「う、うん。あのね……」
少年は少しずつ話し始めた。
話によると、少年は父親と2人で暮らしていたらしい。
父親は貧しいながらも男気溢れる漁師で、周りからも慕われている人間だった。
それがある日、仕事の漁をしていると、いつもの鬼ウニと違うウニが大量に網にかかっているのを発見し、1つ食べてみたという。
(よく食ったな……)
するとそれがあまりにも美味しいので、仲間にも配り、漁協にも卸したそうだ。
その日から、父親は毎日怪物ウニを食べるようになったらしい。
そして、痛風の激痛により漁ができなくなったが、それでも怪物ウニを食べることだけはやめなかった。
次第に、父親の精神に異常が見られ始める。
何かを問いかけても、「ぺぺン」としか答えなくなり、そしてある朝少年が起きると、父親は消えていた。
街で目撃情報を集めると、ペペロニア方面に向かったという情報だけがあったが、それ以降、父親から音沙汰は無かったという。
「と、父ちゃんは、俺のことが一番大事っていつも言ってた……!いきなりいなくなるなんてあり得ない!」
「だから怪物ウニを食うとおかしくなると?」
「う、うん……」
少年は俯いた。
「それで、ペペロニアには行ってみたの?」
少年は首を振る。
「ペペロニアへは馬車じゃないと行けないし、お、俺、そんな金無くて……。だからこの街で情報を集めるしかなくて」
「そうか……」
クロエが悲しそうな顔で呟く。
「だ、だから、サ、サタンさんに、父ちゃんの行方を探してほしくて!」
「……え?なんで俺の名前を?」
いきなり名前を呼ばれてビックリした。
「友達のスマポでバズってるギガントモンスターの討伐動画見せてもらってたから……」
「サ、サタン様は有名なんですのね」
メイジーが改めてまじまじと見つめてきた。
「それで?父ちゃんがどこに行ったか探してくれって?」
俺は改めて少年に向き直る。
「う、うん……。と、父ちゃんは多分、ピッピンプンスカ教会本部へ向かったんだと思う……」
「ピッピンプンスカ教会ですって?なぜそう思われるのかしら?」
メイジーが問いかけると、少年はその理由を語り出した。




