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令嬢が放つ魔法『水の中歩けるヤツ』

「なあ、メイジーとかいう人。今、あのグラグラしてる船にあんたを戻しても良いんだけど、とにかくあのデカいイカをなんとかしないと誰も助からないから、ちょっとだけこのままでも良い?」


メイジーは黙ってコクコクと頷いた。


「オッケー」とメイジーに伝えると、俺は人差し指、中指、薬指を鉤爪のような形にして、呼吸を整える。


「ふぅぅ~~」


すると指は赤黒く光り、エネルギーを帯びた。


そして、船に触手を巻き付けるイカに向かって言い放つ。


「おい!イカ!その船は求愛相手じゃねーぞ!しかも現代でその変態親父じみた抱きつき方は、セクハラ一発アウトですから!」


言葉がわかっているのかいないのか、余計に締め付けを強くするイカ。


船は大きくぐらついた。


「まだやるか!この野郎ッ!」


指3本にエネルギーを集中し、イカの触手目掛けて振り下ろした。




「労働組合相談クロウーーー!!!」




3本の赤黒いエネルギーの刃がイカに向かっていき、そして船に巻きつく触手を切り落とした。


触手は切り離された瞬間、霧散していく。


「!!?」


マリアは俺の労働組合相談クロウを見ながら絶句していた。


「おっさんのセクハラ、パワハラは許しません」


「な、なんですの……。あの技は……」


プラーケンの触手から解放された船を見ながらメイジーは呟いた。




「ぶぇええぇぇえ」



カトリーナが吐きながら親指を立てる。


しかもしれっとポーポー公爵でライブ配信しているようだ。


「そんな余裕あるんかい」


俺は空中でため息をつくと、改めてプラーケンを見る。


触手は切り落としたものの、依然船の下には巨大な本体がいる。


あれが海面に上がってきたり、海中で暴れたりしたら船は転覆してもおかしくない。


倒すためには恐らく胴体から真っ二つにするのが手っ取り早そうだが、船がいるので空中から攻撃するのは危険過ぎる。



「海入らなきゃダメかぁ~……。濡れたくないよぉ~……」



対策はそれしかないが、服が濡れちゃうし、水も冷たそうだ。


そう考えると俺は心底嫌な気持ちになった。


「あ、あの……」


すると、脇に抱えたメイジーが話しかけてくる。


「うん?」


「あの、それでしたら、私が水中でも普通に動けるようにできますが……」


「どういうこと?」


俺はメイジーに問いかけた。


「海の中は水と酸素がありますが、その酸素だけ集めて体の周りを覆います。一定時間は呼吸もできますし、海中で動けますわ」


「え、じゃあ濡れたり磯臭くならずに済むってこと?」


「え、ええ」


俺が気にしてるポイントに若干呆れながらメイジーがコクリと頷く。


「じゃあ頼む。やってくれ」


「はい」


そう言うと、メイジーの周りに水色の魔法陣が現れる。


「……『水の中歩けるヤツ』!!」


メイジーが手をかざすと俺とメイジーの体に薄い空気の膜が張り、全身を覆った。



「魔法の名前ダサッ!」


「べ、別にいいでしょう!さ、これで動けますわよ」


「いや、でも、これ俺だけじゃなくてあんたも入ってない?」


膜が張っているメイジーに向かって問いかける。


「ええ。ここまで来たら見届けますわ。あのデカくてイカ臭い奴の最期を」


豚野郎を罵るかのような言葉で、メイジーは目を光らせた。





そうして準備の整った俺はメイジーと共に、海の中へ潜っていく。


海面近くはまだ明るいが、イカがいるのはもう少し下のため、もう少し潜ったら視界も悪くなりそうだった。


「それにしても『海の中潜れるヤツ』ってあんたの魔法すごいな。助かった」


俺は体を覆う膜を見ながら素直にお礼を言った。


「『水の中歩けるヤツ』です。二度と間違えないで」


「どっちでもええわ」


そんなやり取りをしながら深海に潜っていくと、ついにイカを射程圏内に捉えた。


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