巨大イカの恐怖と何を聞いても答えられない新人の船員
「ぶぇえええええ」
「いきなり船酔いかい」
出発後、デッキから海に向かって戻すカトリーナに俺はツッコんだ。
「はあっはあっ……。ツッコんでないで背中とかさすりなよ……」
「ったくうるせーな……」
俺は仕方なくカトリーナの背中をさすさすしてやった。
「はあっ、はあ……」
落ち着いてきた様子を見て、手を離す俺。
「ちょっと!まだやってよ……。サタンってマッサージやってくれるって言ったくせに10分とかで切り上げるタイプでしょ……。ぶぇえええ」
「吐きながら毒づくなよ」
「はぁっ、はぁっ……。なんでこんなに揺れるんだよ……」
船が出発して1時間。
最初は穏やかだったが、たしかに先ほどから大きく揺れる。
他の乗客たちもざわつき始めるほどだった。
「お、おいおい。こんなに揺れることあるか?」
「た、たしかに。いつもこのルートで行ってるが、こんなに揺れないな……」
「お母さん……。怖い……」
乗客の中には幼い子供もおり、不安が伝染していったようだ。
俺はデッキの上から海を見てみる。
「……あ?」
すると、船を中心に"渦"が巻き起こっていた。
視界を戻してみると、船が同じ所をぐるぐる回転していることに気づく。
「なんだよ、これ……」
そして、俺が状況を把握したタイミングで係らしき船員がデッキに現れた。
「え、えー。お、お客様にお伝え致します。ただ今、このプッチンプルー号が突如海面に現れた渦に巻き込まれ、か、舵の操作ができない状況になっております。お、お客様におかれましては、なるべく安全な室内に移動して、落ち着くのをお待ち下さい」
弱気でたどたどしい説明に不安が募る。
船客の1人が声を荒げた。
「な、なあ!大丈夫なんだよな?結構起こることなんだろ?」
「いや~、私も1週間前からの勤務なのであまりわからないんですよぉ~…」
「…………」
別の女性も船員に問いかける。
「あ、あの。子供が船酔いになってしまって、医務室などありますか?」
「え~……。ちょっとわからないのでぇ~後ほど確認しますのでぇ…」
「…………」
別の若い男性も恐る恐る問いかける。
「あ、あの、もしかして……。この渦ってこの辺の海に巣食う"プラーケン"じゃ……ないですよね?」
「プ、プラーケン!?」
「おい、プラーケンかもだって!」
「ひぃいいい!プラーケンだったら終わりだァ!」
「お、おい!船員さん!どうなんだ!?プラーケンの可能性はあるのか!?」
「………………」
「………ど、どうなんだ?」
「ちょっとわかんないんですよぉ~」
「「「お前何も知らねぇな!!!」」」
乗客全員で船員にツッコむと、その瞬間、渦の中からイカのような巨大な触手が2本現れた。




