わかりやすく悪い奴、現る
「おいババアァ~!こりゃどういう了見だァ?食糧が規定値に3kgも足りてネェじゃねぇかよ!!」
村の入り口に積まれていたのは、水や食糧の山。
それを男が測量機に乗せて重さを測っているようだった。
「えぇ……。すみませぬ……。今月は寒かったものですから……、野菜も米も不作でして……」
「あァ~?それでもよぉ~。お前ら生きてんじゃん?食糧足りねぇんだったらなんで生きてんのよ?隠し持ってるから生きてんじゃネェのかよ!?出せやオラァ!!!」
そう言うと男は老婆を突き飛ばし、その体に蹴りを入れ始めた。
「オラァ!ババア!オラァ!!」
「や、やめてくれ!!」
その様子を見ていた村人が止めに入る。
「あ?文句あんのか?おっさん。この村は帝国に"反逆の意志"がありましたって戻って労働省に伝えとくか?あぁ?」
「い、いや、それは……」
「じゃあ殴っていいよね?このババアが支払うべき食糧税を払わないからこうなるんだからさ」
「いや、ですが……これ以上食べられないと村人が死んでしまいます!そうしたら食糧もお渡しできなくなって……」
「あ?俺を脅そうってのか?」
「い、いや……」
老婆から足を離し、村人に詰め寄る男。
「お前らが死ぬとか、俺に関係あんの?……食糧税はきちんと支払って、気合いで生きろ。そして帝国のために納め続けろ。……わかったかオラァァ!!!いいから持ってこい!!!」
「ひっ……」
村人は村の中へ戻ると、残りの食糧を持って男へ手渡した。
「これで足りるはずです……」
男が測量機に乗せると、規定の量に達したようだった。
「はい、測量はOK。でもよォ~?出せるのに出さなかった罪は、帝国に報告せざるを得ないよなァ~?」
「い、いや……それは……」
「俺はよォ~。本当はそんなことはしたくねーんだわ。だから……わかるよな?"俺用の食糧"出せや。3kgな」
男は荷造りしながら背中越しに村人へ伝えた。
「そ、そんな!!それでは本当に村人が死んでしまいます!!子供もいるんです!!」
男は振り向いて髭面に満面の笑みを浮かべて言った。
「知・る・か❤️」
ヴゥン……!
その瞬間、俺は男の前に瞬間移動すると、デコピンのように人差し指を丸めて、男の顎を上に向かって打ち上げた。
「っっぶぇええぇえっっっ!!!??」
男の足は地面から浮き、そのまま上空へと垂直に吹っ飛ばされていった。