買い物に割り込んできた海賊にケンカを売る
「オッケー。交渉成立だな」
俺は握手を求めたが、その手をガリレオは手の甲で跳ね除けて言った。
「ふん。ただし、完全討伐の成功報酬だ。足一本獲りました~とか舐めたこと抜かしてくれるなよ」
これまで失敗続きだったのか、まるで信用していない感じが伝わる。
「わかってるって。おっさん、今夜はカニパーティーだから腹空かせとけよ。冷凍しておけば、今年の"ふるさと納税"でカニを頼む必要はねぇ」
「ふん……」
老紳士は鼻で笑った。
この世界、ふるさと納税あるのかな?
「じゃあギガントなんとかがいる場所がわかる地図よろしく」
「死んでも責任は取れんぞ。もうすでに10人は死んでいる」
老人からプロンプニンの森の地図を受け取る。
「そりゃいい。俺は俺を殺してくれる奴を探してるんだ。カニに殺されるってのもギャグとしては悪くない」
「………?」
よく意味がわからないという顔をする老紳士に背を向けて、俺は店を出た。
パブを出ると、港に巨大な船が停まっているのが見えた。
「でかっ!なんだあれ」
大きさは一般的なクルーズ船が4つ合わさったくらいの規格外の大きさだった。
「あー、あれは海賊船『バッドボブ号』だよ」
「海賊?」
「うん。元はこの辺の荒くれが集まって帝国船を襲って金品を強奪したりしてたんだけど、そのあまりの強さにどんどん人が集まって巨大化した結果、"国"みたいな感じになっちゃったんだ」
「あれ、国なのか」
海賊が巨大化して国になるなんて聞いたことがない。
「厳密に言うと誰も認めてないから国ではないんだけど、帝国もあいつらと戦争したくないからどうしようもなくなっててさ」
「あんだけデカいのとぶつかったら被害もデカそうだしな」
「今は金と自由を保証する代わりに、帝国の敵を排除するって同盟を結んでる」
「なんだそりゃ……。結局飲み込まれてんじゃん」
俺はあくびをしながら興味なさげに相槌を打つ。
ふとコートのポケットに手を入れると、さっきの残り1ギルがあった。
(そういや喉、乾いたな……)
周りを見ると、ココナッツのような大きなトロピカルフルーツにストローが刺さった美味しそうなジュースが売っていた。
(あ、1ギルだ)
価格は1ギルで、店頭にあるのはあと1つのようだ。
俺はフルーツを手にすると、店のおっさんに話しかけた。
「おっさん、これ……」
「親父ィィーー!!!このジュースくれーーい!!」
俺が買おうとジュースを手にした瞬間、隣から巨大なバイキングハットの男が現れ、バッ!!とジュースを奪い取っていった。
「デューさん、まいど!1ギルだよ。最後の一個だ。ツイてるね」
デューと呼ばれた男は、ニカっと笑って店主に1ギル手渡した。
「これうまいんだよなぁ~!!俺のマイブームで、毎回プニパンに寄る楽しみになってるぜ!親父、ありがとな!」
「嬉しいね!また良いフルーツ入れとくからね!」
先に買おうとした俺のことを無視してやり取りが続く。
そして、デューがストローに口をつけようとした瞬間、俺はそいつの手からフルーツジュースを奪い取った。
「はい、おっさん、1ギルな。このジュース、俺が先に買おうとしてたから、俺のもんだ。そうだろ?」
店のおっさんにそう伝えると、1ギルを手渡した。
そして、ジュースをごくりと飲んだ。
ジュースの代わりにチューっと空気を吸ったデューは、みるみる怒りの表情に変わっていく。
「うまーーーい!デューさん!これ、うまいよ!!」
口に広がる甘みと豊富な水分が体を潤してくれる。
その感動をフルーツジュースを指差しながらデューさんに教えてあげた。
「おい……。お前、俺のジュースを……」
「チューーーーー!!」
いっきに全て果汁を飲み干すと、俺は満足して言った。
「美味しかったー♪」




