"再生数"という魔物に取り憑かれた少女
(たまたま……だよな?)
彼女の名前に動揺して黙っていると、カトリーナは怪訝そうな顔をした。
「なに黙ってんだよ。可愛い名前だね、とか言いなよ」
「え、ごめん。聞いてなかった。名前なんだっけ?」
「ふざけんな!」
俺の疑念は一旦置いておくことにした。
「ってかお前は一体何者なんだ?チョコレートとか持ってたしこそ泥なのか?」
「ち、ちがうよ。ちがうけど……チョコは……その……事故でもらってきちまったっていうか……」
「いや、別に俺、警察じゃねーから。誰も怒ったりしないし、話して大丈夫だよ」
「う、うん。あのね……」
カトリーナはチョコを持っていた理由を語り出した。
聞けば、カトリーナの仕事はギルドで仕事を貰う"何でも屋"で、今は『手紙の配達』を請け負っていたらしい。
そして手紙を届けにマルタのさらに先にある『ポリポリ町』へ行った時、帝国から来た税収者が幼い子供を抱える女性を蹴っていたので、止めに入ったらしい。
その結果、「邪魔だ!」と蹴りで吹っ飛ばされ、色々な街に出向いて高級チョコレートを売り歩いている露天に直撃。その店が大破してしまったらしい。
そして、店を壊してしまった責任を取りたくなかったカトリーナは、そのままダッシュで逃げたとのこと。
その後、気づいたらチョコレートが3個、ポケットに入っていたらしい。
そのうちの1個を俺に食わせ、動画魔法アプリのプーチュープにアップして伸び悩むチャンネルの再生数を伸ばそうとしたとのことだった。
(とんだ食わせもんだ……)
「う、うち貧乏だから……その……なんとか再生数稼ぎたくて……。わ、悪かったよ……」
「今、警察に連絡しといたから」
「やめろよ!」
しかし、まだ聞いていないことがあったので、この際すべて聞いてみることにした。
「そういえば、さっき鳥を逃した時、なんか風みたいなの起こしてなかった?」
「あぁ。これね」
そう言うと、カトリーナは地面に風を集め、小さな竜巻を作った。
「うわっ。なにそれ」
「魔法だよ。小さい頃からできるんだ。学校行ってないからわかんないけど、あたしの属性は多分『風』なんだと思う」
「属性とかあるんだ?」
「うん。その人によって生まれつき決まってるんだって。多いのは地水火風に光と闇。その他にも色々あるらしいけど、ほぼ見かけないからどんなのかは知らない」
俺は「ふーん」と頷くと、思案した。
(この世界に来たから、俺にも属性とかあるのかな?)
そう考えると、ちょっと楽しみになった。




