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彼女の名は、俺が殺した女性の名前

その後、俺は自分の窮状を彼女に話していた。


ーーー不死身の吸血鬼であること。


ーーーずっと死にたいと思っていたこと。


ーーー死ねたと思ったら転生してしまったこと。


ーーーこの世界で死ぬ方法を探したいこと。


別に異世界転生とかはウソだと思われてもいいし、手っ取り早く情報を仕入れるためにはこの子に事情を説明した方が早そうと判断した。


「ふ、不死身の吸血鬼……?謎の生物過ぎるだろ……」


「そう。そして何よりイケメン」


「嘘だろ!?」


「いや、どっちに対して!?」


そして、首を傾げながらもなんとか少女も納得してくれたようだった。


「に、にわかには信じられないけど……でもお前のあの強さとか、空飛べるのとか見てたら、異世界から来たってのも信じざるを得ないっていうか……」


「あ、元の世界でもそんな奴はいない。俺だけ。あ、違うわ、俺とあと何人かだけ」


「お前なんなんだよ!複雑なんだよ!」


異世界から来たというだけでも難解なのに、さらに人間じゃない謎の生物だったことで困惑したらしい。


「まぁ吸血鬼って言っても血を吸ったりしないから安心しろ。あんま好きじゃないんだよ、鉄臭くて」


吸血鬼と一口に言っても、人間の血を吸う、といった伝承のものとはちょっと違う。


確かに吸血鬼にとって"血"は大切なものだ。


ただし、無くてはならない、というほどのものでもない。


人間が食事から摂る大切な栄養素を三大栄養素と言うが、吸血鬼にとってはその栄養素のひとつが血というだけだ。


しかも、基本的には人間である必要は無く、牛などの動物でも良いため、レア焼きでステーキとか食べてれば十分だった。


今は失われてしまったが、特定の聖なる武器で致命傷を受けたり、急速に回復が必要な時には人間の血が最も効率的だが、この現代にそんな危機になることはほぼ無く、しかもそんな状況があればとっくに自分で死んでいる。


「そ、そうなんだ。なんとなくわかったけど、複雑でめんどくさいね」


(俺だってこんな複雑な人生ちゃっちゃと終えて早く死にたいよ……)


少女を尻目に俺はため息をついた。





「ところでお前、名前は?」


俺は少女に問いかけた。


「個人情報なんですけど」


「いや、名前くらいいいだろ」


「じゃあおっさんは?」


「おっさんじゃねーし。実年齢はスーパーお爺ちゃんだし」


「はいはい。謎の生物ギャグね」


少女は話しているうちに段々俺の扱いに慣れてきたようだった。


「俺は……サ、サタン?」


「いや、何で疑問系?」


「いや、サタン」


「キリッと言うなし」


この世界で実名は意味を持たないので、俺はマルタの老婆に呼ばれたように『サタン』でいくことにした。


「ってか魔王の名前付けるとか親の顔が見てみたいわ」


「親は……昔300年くらい自宅警備員してたら、「邪魔だから出てけ」って俺を追い出したんだ……。うっ……うっ……」


昔の黒歴史による親との別れで涙を誘う。


「いや、全然泣く話じゃないし……」


「しかも、まだ多分死んでない……」


「ご健在かよ」


「ほら、俺は名前を言ったぞ。お前の名前は?」


背中を向けて前を歩く少女に名前を聞いてみる。




ザザ……。




春の涼しい風がそよぐ。





こちらにクルッと振り向いたその顔は、逆光で見えなかったが、多分笑顔だった。


そして、彼女は"その名"を言った。




「カトリーナ。カトリーナ・メルクーリ」




ドクンッ。


ドクンッドクンッドクンッ。


ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン。


その名を聞いた瞬間から、鼓動が早くなり、落ち着かない。



ーーーカトリーナ・メルクーリ。



ーーーその名は。


ーーーこの少女の名は。




(なんの因果なんだ……)






ーーーかつて俺が、現実世界で、唯一殺した女性の名前だった。


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