悪の大司教vsパリのチンピラ
「メ、メイジーーー!!!」
液晶を見てカトリーナが大声を上げる。
「ちっ……」
液晶越しに真紅の瞳で観察すると、まだ息はあるようだが、かなり呼吸が小さくなっていた。
そして、その横には意識を失ったクロエ。
メイド服は無残に切り裂かれ、地面には亀裂がいくつも入っている。
どうやら激しく戦ったようだ。
だが、こちらもまだわずかに息はあるようだった。
「おい。お前俺の仲間に何してくれてんの」
「ククク。教会をチョロチョロとネズミのように探っているようでしたので、少し注意をして差し上げただけです。ルールを守りましょう、とね」
「いや、ルール守らせすぎだろ!!あそこまでする必要があるのか!?」
俺は液晶を指差しながら抗議する。
「まぁ抵抗しなければ優しく『実験』して差し上げる予定だったのですが……。あのメイドが思っていたより抵抗してきたもので……つい、ね」
そう言ってエーギルは少し破れた自身のキャソックを忌々しそうに見つめた。
地面の亀裂もどうやらエーギル側の攻撃だけではなかったようだ。
「クロエ……。きっとどうしてもメイジーを助けたくて……」
カトリーナが涙を浮かべる。
「ククク。私は神の教えを説く大司教という立場ですので。祈り方を教えて差し上げたまでです」
クロエはうつ伏せに突っ伏したまま動かない。
ーーーその時。
ーーーーーーーーードクン。
突然、ジョウチンの心臓が跳ねた。
(ん?どうした?)
横顔を見ると、液晶を見ながら目を見開き、絶句していた。
「おい、ジョウチン」
「……………」
「ジョウチンってば!」
「……………」
「おい!チンピラ!何固まってんだよ!」
様子がおかしいジョウチンにカトリーナが声をかける。
「……やめろや」
様子のおかしいジョウチンが俯きながら蚊の鳴くような声で呟く。
「やめる?……いやいや。まだ始まっていません。これからですよ?彼女に頑張ってもらうのは。ククク……!」
エーギルがそう言うとメイジーのイスの周りにピンクの触手が2本ほど現れた。
「なんだあれ……」
「ち、ちょっと!やめろよ!メイジーに変なもん近づけるなぁーー!」
カトリーナが叫ぶ。
「ククク。あれは、『信心ワーム』です。取り憑いた者の信心を喰らい、そして成長し、本数が増えていきます」
「信心を喰らう?」
「ええ。つまり、本数が多ければ、ウニの効果が出ている証拠です。が、まだ2本。全く洗脳できていませんね」
「絶対信心喰ってねぇよな……」
「…….うん。絶対信者の中にある魔王の芽だと思う」
カトリーナも気持ち悪そうに顔を背けた。
「では、どんどんウニを与えていきましょう」
ワームは口の中にカラフルなウニを出し、メイジーの口に向かって突っ込んだ。
「おい!やめろ!」
俺は慌てて叫ぶ。
「ククク……」
しかし、本数は変わらなかった。
「ふむ。やはり……彼女も"プリビアス キャッチャー"かもしれませんね……。それもこれは……!」
その瞬間、メイジーにウニを食わせた液晶のワームが緑色に変化し、そして『爆ぜた』。
「これはこれは興味深い!どこまでウニを食べさせたら"加護"が外れるか、彼女でも試してみましょう!」
エーギルはさらにウニをワームの口から出しメイジーの口に照準を定める。
ーーードクン。ドクン。
「やめろ……」
ジョウチンの鼓動がさらに速くなる。
「さて。いつ狂うのか、楽しみですねぇ。あとは身体が保たなくて死ぬか。……そうなると実験体として機能しなくなってしまいますね……。それならアレを使えば……」
ーーードクン。ドクン。ドクン。
「やめろ……!」
ジョウチンの呼吸が浅く速くなる。
ーーードクン!ドクン!ドクン!
「そうです!それなら一生彼女を生かしたまま実験が出来……」
ーーーーーーートクン。
「やめろっつってんだろうが!!!」
ーーーーーバゴォーーーーーン!!!
「!?」
その瞬間、エーギルの近くの壁を突き破り、巨大なイバラが大聖堂に出現した。




