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チンピラ、記憶が戻る

「俺は、ここで司祭として働いてた。正確には働かされてた、かな。……つっても、バイトだけどな」


「バイトで司祭?」


神の教えを説く者がバイトでいいのかと思いつつ問い返す。


「ああ。バイト代がめちゃめちゃ良かったからな。でも、なんでこんな高額なのか、入ってみてわかった」


「え?」


「たしかに司祭は司祭だった。ただし『拷問・処刑』専門の、な」


「げ……マジか」


カイは上体を反らして天井を見た。


「俺は来てすぐに『やっぱやめる』と伝えて暴れたが、エーギルの能力で拘束された。その後、変なでかいウニを食わされて、そこから先は断片的にしか覚えていない」


「怪物ウニか……」


俺は顎に手を当て考え込んだ。


「最悪なことだが、恐らく操られていたんだと思う。銃を持たされて、処刑部屋で男や女と向き合った」


「女までいたのか……」


「性別は関係ねぇ。拷問にかけられるのは、『ウニで洗脳されない奴』だ」


「なるほどな」


「多分だけど、洗脳されてる俺は何度もこの引き金を引かされそうになった。だが……」


「眷属印か」


「ああ。『撃てなかった』らしい」


「そりゃそうだ」


「洗脳されてるのに命令に従わない初めてのサンプルだったからか、すぐには処刑されなかったみてーだ」


「それでここに繋がれてたのか」


「そうみたいだな。ウニの洗脳効果でよく覚えてねぇが……。お前に額を触られて正気に戻った」


カイは「ふん」と鼻を鳴らした。


あの頃と同じくツンデレの可愛い奴だ。


「まぁその話聞いて確信したわ。やっぱこの教会グレー過ぎ」


「ああ。ってか、そういやお前はなんでここに?……ってかここにいるってことは………現実世界では死んだのか?」


カイはその事実に気づいたようだった。


「ああ、死んだ。お前の子孫のニコル・グランデに殺された」


俺は笑いながら現実世界でエクソシストのニコルに殺されたことを語った。


「そ、そうか!……ごほん。ざまーみろ」


カイは一瞬パッと顔を明るくしたが、すぐに咳払いして毒づいた。


「ニコル君のおかげでやっと死ねた!って喜んでたらこの世界に転生してて、ショボンって感じ。しかも引き続き不死身だし」


「もう諦めてずっと生きてろよ」



「嫌だ嫌だ!絶対に死ぬんだ!」



「どんな駄々のコネ方してんだよ」


カイはため息をついた。


「あとジョウチン。お前の周りに草花が生い茂ってるけど、これは?」


牢の中の壁からは、なぜか不自然に草花が生えてきていた。


「ああ。無意識に出ちまってたが、これが俺の『地』に属する能力みてーだ。ガキの頃からなぜか草を動かしたり、花を咲かせられるんだ」


カイは壁から生えた大きくて真っ赤な花を摘むと少し笑った。


「ガキの頃はたまに珍しい花が咲くとテンション上がってたな。こっちでも、……前世でも」


なぜか寂しそうに呟くと、カイは能力を"解除"した。


「うわっ。無くなった」


俺はビックリして一歩後ずさる。


「そういや、お前の能力は?……つっても、そんなもん無くても別に構わねーだろうけど」


「うーん。俺も仲間が能力の話してたから楽しみにしてたんだけど、なんか俺は『無属性』っぽい」


「……ってか、お前仲間なんていんのか?」


「ああ。ここに来てから色々あってな。一応」


「ふ、ふーん」


「一緒に来る?」


「……は!?……い、行くわけねーだろうが!ま、まあ。どっちにしてもここにはいられねーからな。この教会出て行くまでは付き合ってやるよ」


カイは少し恥ずかしそうに呟いた。


「オーケー。じゃあ後で俺の仲間も紹介するわ。あと、一応俺、依頼受けててさ。探してる人が2人いるんだ」


「依頼?」


「うん。金持ち爺さんの娘夫婦と、父子家庭の子供の親父。どっちもこの教会絡みでしばらく帰ってないらしい」


「あー。じゃあここの信者はミサ以外じゃずっとウニ食ってるから、いるなら多分食堂じゃねーかな」


「マジか!ナイス情報!ジョウチン!イェー!」


俺はハイタッチしようとしたが、かわされた。


「だが、怪しい動きしてたらエーギルに気づかれるからよ。早めに行動した方がいいぜ」


「そのエーギルってどんな奴?金持ち爺さんも娘を洗脳したって目の敵にしてたんだけど」


俺はガリレオの爺さんの激怒を思い出しながら聞いてみた。


「見た目は優男みてーな奴なんだが……。ありゃあ……マジもんでヤバい。対峙しただけでゲロ吐きそうなくらいの瘴気を纏ってやがる。どうなったらあんなオーラが出るのかマジでわかんねぇ」


「なにそれ」


「いや、ガチ中のガチだから。お前も会ってみりゃわかる。しかも、その能力もよくわからねぇ。知らんうちに拘束されてたしな」


「会いたくないなぁ」


「普通にやったらマジで殺されるぜ。つーかお前、現実世界じゃ最強だったけど、こっちでも戦えるのか?」


「わかんないけど、凱旋門の10倍くらいの巨大カニとか、エッフェル塔を横にしたくらいの巨大イカ程度なら刺身にしてやれたよ」


「『無属性』で?」


「うん」


「無属性って、その辺の能力持ちの子供にだってやられちまうような単なる物理攻撃だぜ?」


「知らないよ」



「……………」


「……………」




「気持ちわりっ」



「いや、気持ち悪くはないだろ!!」




そうして、ひとまず俺たちはガリレオの娘夫婦とローエングリンの親父を見つけるため、食堂へ向かった。

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