身体強化魔法と武器強化魔法
ちょっと長めかもしれないです。
よろしくお願いします。
昨日の稽古でのこと。
「昨日教えた魔力操作はうまくできるようになったか?」
「はい!1秒ぐらいで全身に魔力を広げられるようになりました。」
「よし、いい感じだな。だが、昨日教えたのは基礎の基礎だ。言い換えれば、これから教える身体強化も武器強化もこれを応用したものになる。だから、これがおろそかにしたら強くなることはないだろう。毎日欠かさず訓練するように。」
「はい!」
うんうん、と満足げにうなずくと
「さて、じゃあまずは身体強化から始めるか。最初はまず昨日と同じように全身に魔力を広げてから、それを燃やしていくイメージだ。ただここで気を付ける点が1つあってだな、燃やす魔力の量が多すぎると暴走して体が吹っ飛ぶぞ。逆に少なすぎると使う意味がない。だから使う魔力の量を調整できるようにならなければならない。
で、普通だったら少しずつ使う魔力量を増やしていって上限を自分で見極める必要がある。」
まじか…、それってすごい時間がかかりそうだな。
「そんな顔するな。それに普通だったらって言ったろ?今は俺がいるから暴走しても無理やり止めてやることができる。つまり、上限だけ先にわかるから弱い身体強化は自分でできるように訓練しろって話だな。」
「わかりました!」
「じゃ、早速やってみるか。昨日と同じように魔力を全身に広げたら、それを燃やすイメージだぞ?あと魔力も限界があるし、昨日みたいな循環でもないから何回でもできるわけじゃない。だから1回1回大切にするように。」
「はい!」
全身に魔力を広げる……、よし1秒かかっていない。で、これを燃やすイメージ、燃やす、燃やす、燃やす………。
あれ?なんか全身が熱くなってきた?いや湯気も立ち始め…。
バチッ!
「痛ッ?!」
「暴走しかけてたぞ。燃やしすぎだ。全身が熱くなってきたら燃やすのをやめろ。体が限界を超えている証拠だからな。」
今のは燃やしすぎか…、それより
「ジークさん、今身体強化を使ってましたか?」
「ん?ああ、使ってたぞ。」
「僕以上に魔力燃やしていたように見えたんですが。」
「…ほう。まあ、それにどうして気づいたかはおいておいて、簡単に言えばレベルの差だな。魔物を倒してレベルを上げれば使える魔力の上限も増えていくぞ。」
「なるほど…、じゃあもう一回やってみます。」
「おう、やってみな。安全にできるのは俺がいる間だけだからな。」
よし、全身に魔力を回してさっきよりもゆっくり燃やそう。………、お?こんな感じかな?体温が少し上がった感じで止められたぞ。
「まだ、もう少しだ。もう少しだけ燃やしてみろ。」
まだ、燃やすのか。あと少しだけ、ゆっくり、ゆっくり。
「よし、ストップ。それを維持できるか?」
このままキープ、キープ…、ああっ!やばい増えてきた!抑えろ、抑えろ…。
あれ?安定した?
「…おお?もう安定したのか?……………さすがに早すぎないか(ボソッ)」
「ジークさん、できました!」
「おお?!よくやったなぁー。」
なんか話し方が変だな。
「ジークさん?」
「おっ?!何でもないぞ。じゃあ一回身体強化を解除してからもう一回身体強化をかけてみようか?これも速度が重要だからな。」
「はい!やってみます!」
身体強化を解いて、もう一回、…………、よし、できた!
「できました!」
「うん、はやいなー、すごいなー」
「ジークさん?」
また話し方が変だな。
「うん、ここで言うつもりはなかったがお前はちょっと自分のことをもうちょっと知るべきだな。」
「自分のこと、ですか?」
「そうだ。普通だったら、身体強化はもちろん魔力循環さえ裏技を使っても1日でできるはずがないんだ。たまにめちゃくちゃ早いやつがいるが、それでも2,3日はかかる。」
「え?もしかして、僕って天才ですか?!」
「ん~、天才といえば天才だな。2、3日でできるやつは、無意識の状態で身体強化を部分的にできてるんだよ。例えば、重たいものを運ぶとき9割り近くの人が筋力が発達する。それ以外の人は自分で腕までの魔力回路をこじ開けて、身体強化を行っている。」
「じゃあ、僕はそれができていたってことですか?」
「…、お前の場合それだけでもないんだよ。言ったろ、もしできていたとしても魔力循環には2、3日かかる。だからお前はもうひと段階応用したものが無意識でできていた可能性がある。で、それは今回教えるつもりがなかった感覚強化というやつだ。」
「感覚強化って何ですか?」
「身体強化は身体能力を魔力で底上げしている。同じように感覚強化は視覚やら触覚やらを魔力で強化しているんだ。ただ感覚強化は身体強化よりも扱いが難しい。暴走したら強化してる感覚器官が吹っ飛んだりなくなったりするし、感覚を治すには普通の回復魔法じゃ足りない。上級の冒険者か聖都の治癒院での最高位の回復魔法じゃないと治らない。正しい強化の状態でも感覚器官にかかる負担が尋常じゃないから、30分持つかどうかって感じだな。」
「…、なるほど。」
「そんな深刻そうな顔するな、無意識の状態で強化できているやつは無意識で使いすぎないようにしているから。で、お前は多分視覚強化ができているんだと思う。さっき俺の身体強化を見て、使っている魔力量が何となく理解できてたしな。あまり使いすぎないように意識すればいいさ。」
「…わかりました、気を付けます。」
「おう、そうしろ。で武器強化だが、武器を体の一部として認識して状態で身体強化をするだけだ。簡単だから、明日の朝にでもやってみるといい。」
「これからはだめですか?」
「だめだ。今はまだ気づいていないだろうが、かなり疲れているはずだ。そもそも魔力暴走なんてしたら意識飛ぶぞ。」
「わかりました。今日はもうやめにします。失礼します。」