待ち望んだ再会
「ジークさん!」
久しぶりに会えたこととほめてくれたことがうれしくてつい大きな声を出してしまった。
「本当ですか!?本当にできるようになっていますか!?」
「ああ、できるようになっているさ。それよりも、今の時間わかっているか?」
「え?」
あれ?空が暗くなってきているぞ?あっ、やばい、また夕飯に間に合わないじゃないか。
「い、いそいで戻りましょう。ジークさん。」
「いやー、もう遅いと思うぞ。シズクが悪い顔で笑いながらまた今日の皿新井はレオ仕事になりそうね、とか言っていたからな。」
「まじっすか。」
うなだれながら食堂に向かうと、シズクがジークさんの言っていたような悪い顔をしていた。
「あっ、レオ来たわね。遅刻だよ~。だから今日の皿洗いわよろしくね、って言いたいところだけど、レナさんが魔法を教えるときに汚れた皿が必要だって言っていたから今日の皿洗いは無しだよ。」
よっしゃ、レナさんマジでありがとう、稽古の時間が増えるぜっ。
「よかった。あとでレナさんにお礼を言いに行かなきゃ。」
「そうしなさい。はい、席について。今日は私が号令かけるから。」
「わかったよ。」
席に着くと、シズクが
「今日はジークさんたちがお肉を持ってきてくれたから、普段より豪華です。ジークさんたちに感謝しながら、しっかり噛んで食べてください。いただきます。」
「「「「いただきます!」」」」
今日の夕飯は大きいステーキとテールスープとサラダだった。ステーキを食べるのは前回にジークさんたちが帰ってきて以来だったからか子供たちは食べるのが異様に早かった。とかいう僕も普段より量は多いのに食べ終わるのはかなり早かった。そして、久しぶりに本当におなか一杯になったのか、子供たちはみんな眠そうな顔をしていた。
しょうがないなぁ、とか思いながら、
「はいはい、寝るなら風呂入ってから布団で寝ようね。」
「「「「はぁーい…」」」」
「じゃあ、風呂場まで行こうか」
「「「「はぁい…」」」」
眠そうに眼をこすりながら子供たちが風呂に向かっていく。すると
「ちょっと心配だから溺れないか見てくる」
と言って、アントンが子供たちを追っていった。
「私も行ってきます。」
ヒカリもあとを追っていく。
「前よりも、世話焼きさんになったわね」
とレナさんが後ろから声をかけてくれた。
「今は最年長ですからね。僕達がしっかりしないといけないんですよ。」
「うんうん、頑張ってね。でも、私たちがいるときは甘えてもいいよ?」
にやにやと笑いながら、そんなことをのたまうレナさんに
「はいはい、あまえてますよー。皿洗い代わってくれてありがとうございます。」
「まったく、かわいくないなぁ。でも皿洗いをするのは私じゃないから甘えられてないよ?」
「え?でもシズクがレナさんが魔法を教えるときに汚れた皿が必要だって言っていましたよ?」
「いやいや、魔法の使い方は前来た時少し教えておいたからね。今回はそれを応用したのを教えて、その練習をシズクにはしてもらうんだ。簡単に言うと、魔法で皿洗いしてもらうって感じだよ。」
「なるほど…」
「というわけで、まだ甘えられてないよね?」
うっ、、、
「レナ、からかうのはそこまでにしてあげろ。レオ、裏庭に行くぞ。」
「はい、ジークさん!」
僕は急いで食堂から出て行った。
「はぁ、逃げられちゃった…」
「あんな言い方するからですよ、レナ」
「まったくだ」
「マロンもウォロもひどいよー。ただ甘えてほしいだけなのに。」
「だから言い方の話です。」
「あれは俺でも逃げるな。」
「えぇー、そんなに?」
「はい。どこかの悪女かと思いました。そんなことより、ヒカリはどこにいるか知っていますか?」
「アントンと一緒に子供たちを風呂に入れているはずだぞ。」
「じゃあ、私はシズクに魔法を教えてくるね。」
「しっかり教えてあげてくださいね。私たちは二人が帰ってくるまで待ってるから。」
「おう。俺は魔法はあまり使えないからな。」
「じゃあ、まずは前回できていたことからの確認からだな。」
「はい。」
ジークさんは紙を一枚取り出すと両手でその両端を持った。
「これをきれいに切ってみろ。」
「はい。………行きます。」
剣を振り下ろすとスッと紙がきれいに半分に分かれた。
「よし。次に前回できなかったやつをやろうか。できるか?」
「はい、できます。」
満足げにうなずくと、半分に切られた紙を一枚ポイッと放り投げた。
「ふっ…!」
剣を振りぬくと紙がきれいに切れていた。
「できまし…、ふっ!」
突然ジークさんがもう片方の紙を放り投げたので、とっさに剣をもう一度振りぬいた。もう片方の紙もきれいに切れていた。
「合格だ。よく気を抜かなかったな。」
「ありがとうございます。」
微笑みながら、頭をなでてくれた。
「じゃあ、また新しいことを教えてやろう。今度は俺がいる間にものにできるといいな。」