教えあおう その2
「じゃあ、まず身体強化教えてよ。」
「うん、いいよ。」
グーとパーで別れた結果、僕とシズク、アントンとヒカリのペアになった。
「じゃあ、まず魔力循環からだね。体全体に魔力を広げるんだよ。イメージとしては、体の中に魔力が通る管があって、それを通して体の隅々まで魔力をまわす感じだよ。」
「へ~、他の魔法と違って体の中で魔力を使うんだ。」
「そうなんだよ。でも、身体強化とほかの魔法は使う魔力の感覚も多分違うから気を付けてね。今日の授業で使った魔力は普段の身体強化で使ってる魔力の半分くらいのつもりだったんだけど、魔力切れ起こしちゃったし。」
「あ~、だからアントンもレオも魔力切れ起こしてたんだ。普段の二人からじゃ考えられなかったからおかしいと思ったんだ。」
「うん、だから、本当に気を付けてね。」
「うん。じゃあ、早速やってみるよ。」
シズクが目を閉じて意識を集中している。どれくらいでできるかな?その間、僕は身体強化の倍率の制御の訓練でもしてますか。
まず、全力の10%くらいをすぐに出せるように練習するか。……、うん。できたけど時間かかりすぎだな。10秒もかかってしまった。実戦じゃ使えないな。もっと速くしなきゃ。
………………、………………、……………。
ふう、10回くらいやったけどまだ7秒くらいかかる。若干速くなってるけど、まだまだだな。
………………………、…………………………、………………………………。
はあ、30回くらいやってようやく5秒か。まあ、もっと繰り返せば1秒でできるようになるか。…そういえばシズクはできるようになったかな。
「シズク~、できるようになった?」
「う~ん、できるようになったんだけど、広げるのにめちゃくちゃ時間がかかるんだよね。1分ぐらいかかってたら実戦で使えないでしょ?どうしたらいいの?」
「ああ、え~とね、何回も繰り返すことかな。何回も繰り返せば、魔力が体に広がっていく感覚を覚えられるからね。次第に速くなるはずだよ。それか、アントンもさっきそこで悩んでたから一緒に考えてみるといいかもしれないね。」
「え?アントンも?」
「うん。アントンはそっちまでウォロさんに教えてもらっていなかったみたいでね。さっきその練習してたよ。」
「じゃあ、後でアントンに聞いてみるよ。」
「そうしてみて。じゃあ、身体強化もやる?」
「うん。ちょっと待って……、うん、体中に魔力を広げられたよ。ここからどうするの?」
「その状態で魔力をつかうんだよ。イメージは魔力を燃料に見立てて、それを燃やしていく感じ。あと、最初は使う魔力は少な目でやってみて。使う魔力が多すぎると暴走するかもしれないから。」
「分かった。」
シズクが再び目を閉じて意識を集中している。さてさて、少しでもできれば自分で練習できるけど、どうかな?
「うん…?」
「できたかな?ちょっとジャンプしてみて。」
「うん。………、えっ!?」
シズクが1メートル程ジャンプした。うんうん、できるようになってるじゃん。
「できてるできてる。その感覚を忘れないようにね。あとさっきも言ったけど、魔力の消費量にも気を付けて。」
「うん。」
シズクは返事をしながらジャンプしたり、木に登ったりしてる。あれはすぐには帰ってこないな。それにしても、初めて身体強化したときあんなことしてたっけ?……、いや確か剣振ってたな。
じゃあ、剣振って待ってるか。余裕ができたら身体強化も同時にやってみるか。
「レオ~!」
10分ぐらいたったとき、シズクのはしゃいだ声が聞こえてきた。
「身体強化ってすごいね!いつもよりすごい動けるよ!これ使いこなせたら、後衛でも物理攻撃もできそう!」
「そうなんだよ。だから練習忘れないようにね。あと落ち着いて。」
「うん。もちろん!」
「じゃあ、次は魔力の総量を把握する方法を教えて。」
「いいよ~。って言ってもレナさんが言ってたことをそのまま教えるだけなんだけどね。えっとね、まず、体の中に水槽があることをイメージして。できたら、魔力を液体に見立てて、水槽に入ってるところをイメージしてみて。それを繰り返してたら、できるようになるよ。そしてできるようになったら、感覚的にできるようになったってわかるから。」
「感覚的に、ってどういうこと?」
「えっとね、できるようになったら何かが思い浮かぶんだけど、それは人によって違うんだよ。で、それでだいたいの魔力量が分かるよ。例えば私は空の明るさだし、ヒカリは月の満ち欠けだって言ってた。でもレナさんは虹の太さだって言ってたから、本当に個人個人で違うんだよね。」
「じゃあ、具体的に魔力をどれくらい使ったかはわからないの?」
「うん、わからない。でも慣れれば感覚でわかるし、冒険者カードをもらったらそこに具体的な数字が書かれてるって言ってたよ。」
「なるほど。じゃあ、早速やってみるよ。シズクも魔力循環の練習をしておけば?魔力循環は魔力を消費しないし。」
「そうなんだ。じゃあ私も魔力循環の練習しておこうかな。あ、何か質問があったらいつでも聞いてね。」
「うん。シズクもね。」
え~と、確か体の中に水槽があることをイメージすると…。
……できなくない?