BAD END case2
こちらも再開していきたいです。
よろしくお願いします。
聖都が歓声に包まれる。
立派な石畳に道は整備され、建物が所せましと建っている聖都に住む住人がほぼ全員お祭り気分に浮かされている。
というのも今日は人類の英雄の凱旋式なのだ。最後の北のダンジョンを制覇したことで、世界に4つあるダンジョンをすべて攻略し、前人未到のSランクを達成した4人パーティーが大陸中央の聖都に帰還したのだ。
勇者をパーティーリーダに据え、賢者と重戦士と聖女で構成されるこのパーティーは真の勇者パーティーとして聖都はおろか全国単位で有名であった。そしてこのパーティーならば成し遂げてくれると皆が期待していたのでなおさらだろう。
そして、とうとう勇者パーティーが聖都の門をくぐった。一番前を歩いている燃えるような赤い髪を短くそろえた背の高い男性が勇者だ。時には聖剣を使い、時には神聖属性の魔法を使い幾千、幾万の魔物を屠ってきた文字通りの最強だ。その容姿は整っていて、彼らのパーティーに女性ファンが付いた大きな要因になった。実際、彼の姿を見た女性たちが黄色い歓声を上げている。
その勇者の少し後ろを歩いているのは美しい白髪の女性が歩いている。その人こそが聖女だ。回復魔法と支援魔法のスペシャリストで、彼女に助けられた人がたくさんいる。その儚げな美貌を持って世の男性陣をメロメロにしているらしい。
そしてその後ろに背丈も度の高さのある大楯を背負った屈強な男性が歩いている。その鍛えられた肉体と熱血精神に多くの冒険者が彼のことをしたっているらしい。実際、彼はスタンピードでの魔物の猛攻をたった一人で受け切ったという嘘みたいなことを成し遂げたことがある。
そして最後に大きな杖を持った少女が現れる。その杖の先では大きな宝石が煌めいていて、それが彼女を賢者だと知らしめている。普段は冷静だが、戦闘になると冷ややかな笑みを浮かべながら魔物を魔法で一掃する姿に、彼女を姉と呼び慕う冒険者が後を絶たないという。
ただ、今日の彼らは様子が少しおかしいようだ。
以前までは彼らは歓声にこたえるように笑顔を見せたり、最低でも手を振り返すことくらいはしていたのだが、今日は一切を無視してまっすぐに聖都の中央に構えられている宮殿を目指しているようだ。
その異変に気付いた聖都の住民はきっと愛想を振りまくほどの余裕もないのだろうと納得し多くが家に帰っていく。しかし、中には過激なファンもいるようで
「師匠!おかえりお待ちしておりました!」
と勇者に飛びつくように冒険者の少女が駆けていく。なるほど、彼女のセリフからして彼女は勇者の弟子なのだろう。
そして抱き着こうとした少女に対し、
「……邪魔だよ。」
勇者は光を集めて聖剣を作り出し、そのまま無造作に振った。
無警戒だった少女はそれに対応することができずに、驚愕に表情を染めながら聖剣を直接受けてしまった。魔物を容易の屠るその威力に違いはなく、彼女の命を一撃で奪い取った。
そしてその様子を見た聖都の住民は突然これまでは考えられない行動を取った勇者を呆然と眺めている。
「……こいつら邪魔だな。」
「じゃあ私がどかしましょうか?」
「……勝手にしろ。」
その勇者の答えを得た賢者が軽く杖を振るう。すると、彼らがいる北地区のすべてが瞬く間に氷に包まれた。
「ふう、これで静かになりましたね。」
と満足げに言う賢者に答える者は誰もいない。
そして、氷漬けになった聖都を歩いていた勇者パーティーはとうとう中央にある宮殿にたどり着いた。そこにはこの宮殿の主である女王が座っていた。
「言いたいことはいくつもあるが、まずは言っておこう。Sランク到達おめでとう。」
静かに女王はそう言った。
「なぜあなた程度にそんなことを祝われなければならない?」
「というと?」
「俺たちはダンジョンをすべてクリアしたんだ。そこですべてを知った。何故ダンジョンがあるのか、この大きな大地の外に何があるのか、
――そしてこの世界の存在意義も。」
「ほお、で?」
「俺たちはあんたとは格が違うんだ。だからあんたの言うことをもう聞くつもりはないし、逆にあんたは俺たちの言うことを聞いていればいい。」
「……。」
「さあ、俺たちを最後のダンジョン、バベルの塔まで送り届けろ。あんたはただそれだけをすればいい。」
「はあ、また失敗か。」
「なんだと?いいから俺たちを……。」
「その必要はない。なぜならお前達はここで私の手によって殺されるからな。」
「は?んなこと無理に決まって……。」
直後、女王からありえないほどの威圧が放たれた。すべてのダンジョンを攻略してきた勇者たちですら腰が抜け、立てなくなるほどの威圧だ。
そうして動けなくなった勇者たちの体を何かが切り裂き、数分後には物言わぬ死体になっていた。
「はあ、次か……。」
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