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人と神様の国取り合戦  作者: きりきりきりたんぽ
ダンジョン攻略
117/125

ダンジョン病

 目の前で男が体から血を噴き出しながらゆっくり倒れていく。

人が人を殺すところを見るのが初めてだったから、ただ見ていることしかできなかった。


「ひひっ!殺してやったぜ、この男をよ!

俺たちがすることにいつも口出してきやがって!

なあ、お前らもそう思ってただろ!?」


 そう、男が他の仲間の男達に狂気じみた感じで声をかける。

でも、他の男達は狂っていなかったようで信じられないものを見るかのように血に濡れた剣とその持ち主を見ていた。


「い、いや。なあ。」

「確かに、不満には思ってたがよ。」

「殺すまではなかったんじゃないか?」

「実際交渉とかをやってたのはこいつだったわけだしな……。」


 言っていることも何もおかしくはない。

でも、だとしたらそんな近くにいたら危険じゃないか?

いくら仲間だとはいえ、その仲間を今目の前で殺したわけだし。


「ああ、そう。じゃあ、お前らも死ねよ。」


 次の瞬間に他の4人の体からも血しぶきが上がった。

……まずいな、剣が速くて僕でも何とか見えたくらいだ。

支援魔法がなければアントン達は見えないだろう。

 すると、上がった血しぶきに近くにいた冒険者が気づいたようで、大声を上げた。


「ダンジョン病だぁー!

今戦えるやつは全員ここに集まってくれ!」


 ダンジョン病?何だそれ?

いや、今はそれどころじゃない。

奴の仲間が全員死んだってことは、一番近くにいるのは僕達だ。


「ああ、やっちまった……。これまでずっと一緒に冒険者やってた仲間をやっちまった……。

へへっ。これもお前らが俺たちの言うことを聞かなかったからだよなぁ?

……つまり、お前達が俺の仲間を殺したんだ。

じゃあ、お前らも死ねよっ!」


 感情がおかしいことになってる。

泣いたと思ったら笑い出し、かと思ったら冷静になってすぐに怒り出した。

情緒が不安定すぎる。

 怒りに身を任せて僕達に向かって突進してきた。

しかも狙ってるのは、僕でもアントンでもなく、シズクだ。

咄嗟にエクスカリバーを鞘から抜いてその間に割り込んだ。


ガキイーンッ!


 つ、強いな。

おかしい。さっきまでとは感じる闘気が段違いだ。

このままじゃ、まずいかもしれない。


「支援魔法を!」


 相手の剣を抑えながら、後ろに声をかける。

何とか鍔迫り合いに持ち込んだものの、単純な力勝負じゃ相手に軍配が上がるようだ。

身体強化も全力でしてるんだけどなぁ……。


「ほら、少年。さっさと片づけなさい。オールブレッシング。」


 聞いたことのない声と共に僕の体に魔法がかかり、体中に力が満ちる。

これなら、……行ける!


「はあああっ!」


 思いっきり、全力で剣に力を込めて押し返した。


「うおっ!なんだいきなり!」


 男の体勢が大きく崩れた。

でも、このままじゃダメだ。すぐに動き出せちゃう。

でも、殺したら僕達はここを出ていかなくちゃいけなくなるかもしれない。

だから、殺さずに動きを止めるなきゃ。


「てめえ!クソガキがッ!」


 ほら、もう体勢を整えちゃった。

できれば、誰が見ているかわからないところで使いたくはなかったんだけど。


「剣聖技 夢幻一閃。」


 僕の剣が勢いよく振り下ろされると同時に、男の四肢で肉体に斬撃による傷が同時に生まれた。

これでもう剣を振れないどころか、身動きも取れないはずだ。


「ああああッ!俺の腕がッ!足がッ!動かねえよぉー!

どうなってんだッ!なんも当たってなかったはずなのにッ!」


 剣をその手から放して、地面でのたうち回っていた。

ふう、これで殺さずに何とかなったかな。

でもこれってどうしたらいいんだろ?

治したらまた僕達を殺そうとするだろうし。


「何をやっているんだ、少年。アイスランス。」


 後ろから、先ほど聞いた声が再びして僕達の頭上を氷でできた槍が飛んでいった。

そしてその槍は僕が動けなくした男に突き刺さった。


「ぐふっ!」


 そしてその男の体が刺さったところを起点に氷に包まれていった。

これは、もう生きてはいないだろうね。

 でも、殺すしか選択肢がなかったとはいえ、ためらいなく実行するなんて。

罰則とかってないのかな?


 後ろから声の主がこちらに近づいてくる。

その人は昨日僕達を観察していた人だった。

昨日と同じく大きなコートを着て、フードを深くかぶり、マスクもしているからぱっと見ではただの不審者だ。

でも、その中で青く輝く瞳は一際目立っていた。

背の高さは僕と同じくらいで、声からして多分女性だと思う。


「いいか、少年。ダンジョン病を発症したものはもう戻らない。

だから殺す以外に選択肢はないんだよ。

分かったか?」


 おお、なんだ。なんか異様な迫力を感じるぞ。


「う、うん。わかったけど。

殺すのは大丈夫なの?」


「ああ、ダンジョン病を発症した瞬間、それは魔物と同じだからな。

それに、見過ごすと大変なことになる。

以前ダンジョンの魔物があふれかけたことがあってな、……って今はそんなことはどうでもいい。


 お前達も気をつけろよ。ダンジョンは危険だからな。

生死が何で決まるかはさっぱりわからないんだからな。

魔物やボスに殺されるならまだいいが、ダンジョン病のせいで人間に殺されるなんて嫌だろう?」


 そう言い残し、その女性は僕達から離れていった。

と思ったら、突然立ち止まり何かを思い出したかのように僕達に向かって話し始めた。


「ああ、もし10層にたどり着いたら私に声をかけてくれ。

あそこのボスを私は倒さなければいけないんだ。」


 そう言うと、今度こそ僕達の前からいなくなった。


 ……名前聞けなかったな。でもなんか怖いからいいかな。

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