Bランクの冒険者(笑)
ダンジョンから出てくると、そこにいた冒険者たちが騒ぎ出した。
ここってイーストエンドであってるよね?
ダンジョンに行く前とは全く扱いが違うんだけど。
戸惑っていると、その中の一人の男がこちらに向かってきた。
明らかに僕達のことを見下しているな、こいつ。
「俺様はBランクのジェイソンだ。お前たちは?」
「……Cランク冒険者のアントンです。
何の用ですか?」
「なに、俺様たちのパーティーに入れてやろうと思ってな。
お前達みたいなガキでも、壁くらいにはなるだろう?」
は?舐めてんの?見た感じ全然強くなさそうだし。
歩き方の重心の置き方も剣を使う感じではなさそうだし、魔力もそんなに感じない。
こんなのがBランクなのか?
っていうことはここら辺にいるのは皆そんな強くないよね。
周りをちらっと見てみると、騒ぐのをやめてこちらを興味深そうに見ている。
その中に好奇心を全く浮かべず、ただこちらを観察しているような目をした人が一人だけいた。
椅子に座っていたけれども、その体からかなりの魔力が感じられた。
それこそ、シズクよりも多いくらいだ。
かなりの実力者だな。
なんで、あの人が来なかったんだろ?
「断ります。」
アントンのあきれたような声が聞こえてきた。
アントンも目の前のが弱すぎることに気づいてるっぽいね。
だから怒りではなく呆れが感情の中で勝っているんだろう。
「あ?なんつった?クソガキども。」
声音を低くして威嚇してくるけど、全然怖くないんだよね。
さっきまで、死ぬかもしれないようなところに身を置いてたんだよ?
実際、何回も死にかけたし。
でもそこまで恐怖心を感じなかったのは、……やっぱりマサムネが言ってた通りに壊れかけてるのかな?
「そもそも、僕達よりもはるかに弱いあんたの下につくはずがないでしょう?」
その一言が逆鱗に触れたようで、顔が怒りで真っ赤になっている。
……いや、逆鱗なんて大層な物じゃないか。
「お前みたいなガキまで、俺をバカにするのか!?
俺様は、聖都で一番大きい商会のアリウス商会の次男なんだぞ!
お前達のようなゴミ共とは格が違うんだよ!
だからお前達は俺様の言うことに従っていればいいんだよ!」
……デジャヴか?いや、あの時のアリスの方がまだましだったな。
しかも何言ってんだろ?バカにしてるんじゃなくて、普通に馬鹿なんじゃ?
だって、身分的には領主か王族でない限り同じだし。
たとえ、それが大きい商会であったとしても。
それに明らかに弱いのに、従えとか、片腹痛いんだけど。
周りの冒険者たちも失笑気味だ。
でも、ジェイソンと名乗った男はそれが見えていないのか、気づかないふりをしているのか、僕達から視線を離そうとしない。
……そろそろ普通にうざくなってきたな。
……やっちゃう?
「やめろ。お前達3人は先に受付行ってこい。」
おお?声に出てたか?
まあ、いっか。
なんか男の足が震えてるけど、気にしない。
……いや、全然よくない。これもまずい兆候だ。
あとで特剣天に行くから、マサムネにどうしたらいいか聞いてみようかな。
「レオ、行くよ。ヒカリはもう行っちゃってるし。」
シズクに袖を引かれた。
言われるままにヒカリの方を見ると、もう結構離れたところを歩いていた。
……あれ結構怒ってそうだな。
受付に行くと、例のボサボサ頭の人がいた。
下を向いてなにやら資料(?)のようなものを見ている。
……なんかその表面が動いてるんだけど。
声をかけると、
「ひえっ、うわー!!」
と叫び声をあげながら椅子から転げ落ちた。
「「「…………。」」」
……えー。
なんかおかしいな。仕事中のはずなんだけどな……。
「いやー、失礼しましたー。と、おや……?
皆さんはつい最近ダンジョンに入ったばかりではー?
もしかしてもう出てこれたんですかー?」
ボサボサの髪を掻きながら、間延びした声で聞いてくる。
「うん、ついさっき出てこれたんだ。」
「いいじゃないですかー。
一層のボスはそこまで強くないからー、倒すのは簡単だったでしょー?」
……どうだったかな?
確かに途中までは全然死ぬかも、とか思わなかったな。
いきなり神気をまとい始めてから話が変わってきたけど。
「そう、……だね。
まあ、確かに倒すこと自体は簡単だったかな?」
ピキーン。
イーストエンド内の空気が一瞬固まった。
さっきまでアントンに突っかかっていた男の声も聞こえてこなかった。
「えと、本当に倒したんですかー?
冗談のつもりだったんですが―……。
もし4人だけで倒せたならー、結構すごいことなんですよー?」
「そうなの?」
うーん。あんまり実感がわかないな。
「少し冒険者カードの確認をさせてもらいますねー。」
「うん、いいよ。」
冒険者カードを渡した。
冒険者カードを見たらわかるのかな?
ボサボサ頭が冒険者カードを隣にある魔道具に入れた。
「……本当、みたいですねー。おめでとうございまーす。」
「「「「「ええええーーー!?!?!?」」」」」
その夜、特剣天にて。
「レオ、今日はよく頑張ったわね。
でも、それはそれとしてお話があるんだ。
とっても大切な、ね。」