VSアシュタロト その2
「そういえば、創造魔法の代償って何なの?」
特剣天にて、剣を振りながらマサムネに問いかけた。
「突然どうした?確か、聞いても変わらないからいい、とか言ってなかったか?」
あー、確かにそういった気がする。でもさ、
「やっぱり、教えてくれるなら知りたいかなって。」
「まあ、構わんが、だったら剣を振るのをやめろ。」
ピタッと剣を止めてマサムネの前に正座する。
最初は慣れなくて何回も足がしびれたけど、何時間もやってる内にしびれなくなってきた。
「はあ、まあいい。
あの時の代償は簡単に言えば、神力が足りなかったから起きたことだな。
そもそも固有魔法を使えるようなってる時にはたいてい神力を体の中に少しはもってるから大丈夫なんだが、お前の場合はかけらもなかったからな。
自分の命というか魂というか、まあそんな感じの大事な物を消費して神力を捻出した。
代償はこのことで、あの時―――が助けてなかったらお前は死んでいたぞ。」
そうなんだ。だったら体の中に少しでも神力があったら、代償はないのかな?
「とはいっても、神力が体の中にあっても代償は存在する。
魔法がMPを使うように、剣がSPを使うように固有魔法は神力を使う。
とはいっても、人が持っている神力はあまりに少なすぎてな。
だから神力を使い切ったら、その代わりに経験値を消費する。
神力は回復するが経験値は回復しない。だから使う時はしっかり考えろよ。」
マサムネを構えてアシュタロトと対峙する。
アシュタロトは物珍しそうな顔をして僕と、星剣マサムネを見ている。
「ほう、それは星宝か。そうか、そうか。
……なあ、お前。私の部下にならないか?
そうすればこの星を制圧した時、お前に半分くれてやろう。
もちろんお前の仲間も助けてやる。」
は?いきなり何を言い出してんの?
しかも、星を支配する?そんなのできるはずないでしょ。
僕程度にそんな提案してる時点でできないね。
「ならないね。そんな提案を僕が受けるとでも思ったの?」
「そうか、残念だ。」
そう残念そうに見えない表情でうそぶくと、突然羽を飛ばして攻撃をしてきた。
アントン達に向かって。
「くだらないね。」
剣を動かすこともなく、斬撃を飛ばしてその羽をすべて切り裂いた。
星剣マサムネのもつ能力も2回目ってこともあって、前よりはちゃんと把握できている。
持ち主に神の属性を付与するだけじゃなくてね。
……そういえば、神の属性って何だろうね。
まず一つ目に、この世界の生物に対する支援効果。
この剣は周囲に全ステータス上昇、HP、MP、SPの上限値上昇、スキル効果上昇の効果を与える。
……やばいよね、これ。この剣一振りだけで戦況が逆転しそうだよ。
それに二つ目に、外の世界の生物に対する特攻効果。
攻撃が当たった部分を強制的に相手の急所にして、必ず最高値の攻撃力で攻撃できる。
また、攻撃が当たれば当たるほど、相手のステータスを下げていく。
しかも、その攻撃が剣である必要がない。
この剣をもって魔法で攻撃しても効果が出る。
これ以外にもまだありそうだけど、まだ僕にはわからないみたい。
でも十分だよね。
「ふふふ。
私の暗黒魔法も全部消されている、か。
久しぶりに固有魔法を使ってみるのもいいかもしれないな。
まあ、まずは普通に攻撃するか。
暗黒付与 炎属性魔法 フレイムウェーブ。
暗黒付与 嵐属性魔法 サイクロン。
暗黒付与 氷属性魔法 アイスコメット。」
黒い炎の波は地面を舐めながら、黒い嵐はそれを空中まで巻き上げながら、黒い氷塊は空から僕の方に向かってきた。
それはそのうちの一つが、かすりでもしたら死んでしまうであろう程の攻撃力がこもっているのが見て取れる。
それに加え、お世辞にもよけられるとは言えないほどの密度を誇っている。
うーん。まあ全部吹き飛ばしちゃえばいいか。
「神聖付与 剣聖技 夢閃十文字・乱!」
3つの魔法それぞれに光で十字が刻まれた。
そしてすべての魔法を消滅させた。
……そういうことか、夢閃十文字は攻撃範囲が限られてるけどなんにでも当たるって感じか。
じゃあ、次はこっちの番かな。
「神聖付与 剣聖技 夢幻一閃・束!」
剣を正面に軽く構えて剣聖技を発動させた。
それと同時にヒナが使っている歩法、縮地というやつを使って一気にアシュタロトに近づいた。
剣聖技をよけたところを狙えれば、多分攻撃が入る。
そうすれば、あいつのステータスも下げられるし。
ザシュッ!!
……え?
当たるとは思ってなかった剣聖技が当たったことに少し驚きながらも、アシュタロトと距離を詰めて袈裟斬りにした。
シュッ!
確かに斬れた。その感触があった。
だというのに、嫌な予感が襲ってきた。
ちょうどラットクイーンが神域生成をしようとする時に感じたのと似ているものだった。
後ろに飛んで距離を取る。
すると、アシュタロトが傷を治しながら僕の方を笑顔で見つめてきた。
「お前、いいな。
人間にしてはかなりいい。
久しぶりに攻撃を受けた。久しぶりに傷ができた。久しぶりに血を流した。
これまでいくつもの星を制圧してきたが、お前のように私と戦える人間は初めてだ。
私と戦えたのは神だけだからな、誇っていいぞ。
……さて、なら私も全力で行かせてもらおう。
神域生成 人の世の終わり。」