VSラットクイーン その4
感想を初めていただきました!
本当にありがとうございます!参考にさせていただきます。
は?一体何が起こった?
……まさか、あの生贄ってやつか!スキルの内容がわからないけど、あのラットクイーンの感じから自分の命と引き換えに強化したんだろうな。
ってなんかやばそうだな。なんか赤いオーラがラットクイーンの全身から立ち上ってるし。
それに嫌な予感がする。
「下がって!!」
そう叫びながら、急いで鑑定を発動させる。
すると
名前 ※※※※※
LV ※※※
HP ※※※※/※※※※
MP ※※※※/※※※※
SP ※※※※/※※※※
攻撃力 ※※※
魔法力 ※※※
物防力 ※※
魔防力 ※※
回避力 ※※
スキル『火属性魔法 LVMAX』『水属性魔法 LVMAX』『神域生成 LVMAX』『※※※ LV1』
称号『※※※※※※』『※※※※※』
って出てきた。
なんだこれ?こんなの倒せんのか?
しかも神域生成って前ブラッディ・ベアと戦った時に僕が使ったあれでしょ?
アレ使われたら必負なんだけど。
「鑑定したか!?」
僕の方にラットクイーンの方を見ながらアントン達が近づいてきていた。
「したよ!!アントン達もしてみて!!」
「できないんだ!!」
え?
「しても鑑定できないって出てきたぞ!!」
「は!?」
ちょっと待て。
鑑定さえできないってどういうこと?
なんで僕は情報はほとんど見えないとはいえ鑑定できてるの?
その時いきなり嫌な予感が膨れ上がった。
いや、今それはどうでもいい。
「ボス部屋から出て!!急いで!!」
とりあえず逃げなきゃ。神域生成を使われたらどうやっても勝てない。
だって僕が使った時、神域内のすべてを感知できたんだよ。
だからあの時、ブラッディ・ベアの全ての攻撃は僕に当たらなかったし、僕の攻撃はすべて当たった。
最低でもそれ。
もっと何か追加で効果があってもおかしくない。
勝ち目なんてどこにもないよね。
4人でボス部屋の入り口に向かって全力でダッシュした。
ラットクイーンに背を向けての正真正銘の全力ダッシュ。
走っている間にもだんだんと嫌な予感が大きくなっていく。
いや、もう予感というより確信だ。
あと少ししたら、何かやばいことが起こるっていう確信。
あと少しで、
手が届くっ!
「キシャアァァァッ!!」
ラットクイーンの大声がボス部屋に響き渡った。
その瞬間、僕達の目の前のあったはずの入り口が消滅した。
まずいまずいまずい。
これは冗談じゃなく本当にまずい。
どうしたらいい?
いや、もうあのラットクイーンを倒すしかないんだけど、できるか?
……できないだろう。あれは次元が違う。
文字通りの神だ。神話の存在だ。
僕達人じゃ太刀打ちできない。
どうやったら僕達は、いや3人は生きてここから出られる?
僕は死んでもかまわない。3人を巻き込んだのは僕だし。
……だとしたら、もう打てる手は心身統合しかないか。
「……万物を燃やす槍っ!」
僕の頭上を炎の槍が通過した。
そして僕の頬を何かが殴った。
「何そんな覚悟決めました、みたいな顔してんのよ!シャキッとしなさいよ!
皆に勇気を与えるんでしょ!だったらあれくらい普通に倒せなきゃダメじゃない!」
僕を殴ったのはシズクの杖だった。
でも、そんなこと言ったって、無理な物は無理なんだよ。
それなのに乱暴に僕の襟首をつかみながらシズクは叫ぶ。
「いい!?レオ、あんたが手伝ってくれって私たちに言ったのよ。
だったら、一人でやろうとしないで、私たちが手伝えるようなことをしなさいよ!」
……。
「あんたが何を考えてあんなことを言ったのかも私は分かってるつもり。
だから、私たちに生きててほしいと思うなら、あんたも生きろ!」
勢いよく僕を突き飛ばして、シズクは離れていく。
「さ、二人とも。あんなのさっさと倒して帰るよ。」
「お、おう。」「分かりました。」
二人ともラットクイーンの方に向かって行く。
離れ際にヒカリが「待ってますよ。」と小さく僕に呟いた。
……どうしろって言うんだよ。
あれは本当の神様なんだぞ。僕達じゃどうやっても勝てない。
戦いはすぐに始まった。
シズクの放った魔法がラットクイーンを全方位から囲うように向かって行くが、それらは当たる直前に不自然な方向に曲がってラットクイーンには当たらない。
お返しとばかりにラットクイーンが50個づつファイヤーボールとウォーターボールを作って攻撃してくる。それをヒカリとシズクの魔法が迎え撃つけど、数が多すぎて全部は撃ち落としきれていない。
その残りが3人の方に向かって行くが、素早く盾を持ってアントンが前に立ちふさがる。
でも、魔法が意志を持っているかのように、盾を躱してアントンに直接当たる。
攻撃を全部受けたアントンは傷だらけになって、今じゃ何とか立ってる状況だ。
……ほら、どうやっても勝てないじゃんか。
それなのに、なんでまだあきらめないの?
ヒカリの回復魔法がアントンにかかって、全ての傷が治っていく。
そして再び盾を構えてラットクイーンの攻撃に備えている。
シズクは今度は多少攻撃がずれても当たるように範囲攻撃に切り替えて魔法を放つ。
それは確かに当たったように見えたけど、なぜかラットクイーンに攻撃は当たっていなかった。
なんで僕を責めないの?こんな大変なことを言い出したのは僕なのに。
ラットクイーンは再び同じように魔法を撃った。
さっきと同じことがまた起こった。
ヒカリとシズクの魔法じゃ全部を撃ち落とせなくて、その残りをアントンが受け止める。
なんで僕を頼らないの?
そうすれば皆は生きて帰ることができるはずなのに。
僕も責任をとれるのに。
アントンにヒカリが再び回復魔法を使うけど、さっきよりも治りが弱い。
そりゃ、あんなに魔法を使ってたらもう魔力もなくなってきてるでしょ。
そうだよ。
もう今から、心身統合を使っちゃえばいいじゃん。
そうすれば……。
……いや、ダメだ。できない。
心身統合を使おうとすると、なぜかさっきの僕の襟首を掴んで怒っていたシズクの顔が、僕を信じてくれたヒカリの顔が、あきれたようなアントンの顔が、頭をよぎる。
……なんでだよ。さっき僕は死んでもいいから3人だけでも、とか思ってたじゃないか。
死んでもいいとか思ってたじゃないか。
なのに、なのに、なんで決心がつかないんだ。
なんで死ぬことがこんなにも怖いんだ。
……そうか僕は、あの時3人に死んでほしくないって思ったんじゃなくて、4人一緒にいたいって思ってたのか。
その間にもアントンはラットクイーンの魔法で傷つき、ヒカリがそれを治し、シズクが多様な魔法でラットクイーンを攻撃している。
でも、そろそろその均衡も崩れてしまうだろう。
こんなところで嘘を塗り固めたことで、自分のことさえよくわからなくなっていた愚か者がいるせいで。
……覚悟決めようか。
僕は戦おう。世界に勇気をもたらすためにじゃない。
4人で生きるために僕は戦おう。その結果、世界に勇気がもたらされれば、それでいい。
ピキ。と音がした気がした。