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本音 (別視点)

今回は別視点(ベッドにいる少女?)になります。

……いったい、こいつは何者なんでしょうか。


 ()はベッドに横になりながら目の前の戦いを見ていました。体はまだあまり動きません。兄の狙いはこいつか私を殺すこと。そのあとはいくらでも情報操作をできてしまうから、どうなるかは想像もできない。でも少なくとも、こいつの幼馴染と孤児院は相当大きいダメージを受けるでしょう。この街から追放されるかもしれない。だから、こいつにとっての最善手は逃げることのはず。こいつが死にさえしなければ、まだ何とかなるはずなのだから。



 なのに、なぜかこいつは私の兄と戦っている。私と同年代に見えるこいつが一回り近く体格が大きい私の兄に勝てるはずがないのに。しかも兄はソロでCランクに上がった実力者です。こいつが戦って生き残れる可能性なんてほとんどないはずでした。



 でも、こいつは兄と5分近く互角に渡り合っています。1回の攻防で生き残れることも奇跡のはずなのに。


 どうして?

たとえ兄と同じくらいの期間剣を振っていたとしても体格差もあるはずです。


 どうして?

そもそもそんな実力があるならさっさと逃げれるはずです。


 どうして?

兄の攻撃がこいつに当たっていないのでしょうか?

刃がつぶれた剣なのに兄の特注品の剣と打ち合えているのでしょうか?


 こいつの行動に関しても強さに関しても疑問は尽きません。


 ーーけれども、いまはするべきことを考えなければ。勝負が決まるとしたらきっと一瞬だ。そしてその瞬間が訪れるのはそう遠くはないでしょう。その時に最善手を取らなければ、私の命はないでしょうから。




 そして、予想通りその瞬間は突然やってきました。こいつが兄に仕掛けたのです。私は信じられませんでした。その仕掛けは私でさえささっているように見えました。そんな考えてもいなかったことが現実に起きようとしていて、私の頭は真っ白になりました。


 ーーどうしましょう。兄が死ぬのは論外です。こいつを止めなければ。でも、どうやっても手が届かない。何とかして……。


 しかし、またもや予想外のことが起きました。左腕から血を流しながら剣を振ろうとしていたこいつの動きが不自然に止まったのです。


 ーーこれなら、魔法さえ発動できれば……。ギリギリ間に合うっ。


 魔法を撃とうとしたときとき、ベッドに何かがぶつかった音がした。兄の体勢から見るに、こいつは兄に蹴飛ばされたんでしょう。でもこいつの目はオッドアイでしたでしょうか?


「ゲホッ、ゲホッ!」


「…お前は、強い、ですね。ここまで強い、とは、思いません、でした。」


 兄が肩で息をしながらこいつに話しかけています。


「…お前は、これから、とても強く、なれるでしょうに。…、ハァ、ハァ、ここで、殺されなければ。」


 兄がこちらに近づいてきます。……、あら?兄はこの程度の運動で息を切らすでしょうか?そんなにこいつが強かったのでしょうか?それに少し、体の線も少し細いような気がします。


「…では、さよなら、です。そして、……残念、です。」


 こいつに向かって剣が振り下ろされます。


「待ってください!兄さん!」


 当たる直前でピタッ!と剣が止まり、兄の目がこちらに向きました。


「こいつを殺さなければならない理由など存在しないはずです!たとえ他の所で生まれたとしてもそれは殺す理由にはならないはずです!」


 そんなこと兄は気づいているとわかりきっているけど、あえて言葉に出しました。


「だから兄さん!思いとどまってください!」


 すると兄は悲しげな目をして、


「…それは、ダメです。この少年はここで殺さなければ……。」


 もう一度兄が剣を振り上げました。


「兄さん!最後に確認させてください。」


「…何ですか?」


「それは、姉さんにも胸を張って、誇れるような行動なんですか!?」


「…………。」


 兄が泣きそうな顔をしているのが見えます。


「…いや、誇れなど、しませんよ。」


「なら!!」


「…でも、これは、しなければならないことなのです!」


 ーーああ、もうだめだ。時間稼ぎはこれまでですか。


 兄が剣を振り下ろそうとしたとき、


バタンッ!


 扉が開いた。そこには午前中に見かけたBランクの冒険者が立っていました。ものすごい気迫を感じます。


「…もうやめな。お前がこれから何をしようが、俺の攻撃のほうが速いぞ。」


「…Bランク冒険者、“剣聖”のジークですか。確かに、もう無理でしょうね。」


「分かったか?なら、おとなしくお縄につきな。抵抗するなら腕の1本は覚悟してもらおうか。こう見えても、弟子が傷つけられて結構怒ってるんでな。」


 兄が逃げようとしているのに気づいていたのか、殺気までも発しています。


「…、ハァ。これは使いたくなかったんですか。一旦引くとしましょう。」


 兄が何か魔法陣の書かれた紙を取り出すと、視界が光で覆われました。

 次の瞬間には兄の姿は無くなっていました。

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