閑話 BAD END case1
初投稿です。
不定期連載になりそうです。
「……………ここも、失敗ですか」
言葉にできないような惨状の都市を見て呟いた。かつて、人の住む最大の都市であり、最も安全と言われていたその場所はいまではその名残すら残っていない。四つに分けられた区画にはそれぞれ、炎、水、風、闇を冠する妖精のようなものが居座り、破壊を振りまいている。彼らが通った後は過程に違いはあれども、更地に代わってしまっている。生き残っている人は中央にある宮殿にこもっている王族とその護衛の騎士のみである。
「いいえ!まだ希望はあります。あきらめるのではなく、次に行かなければ…」
その言葉を残し、少女はその場から去っていった。
それから数日後のこと、街を破壊するのに飽きたのか、彼らは中央にある宮殿へと足を進めていた。どう考えても絶体絶命だが、宮殿の人々はまだあきらめていなかったようだ。彼らが宮殿まであと少しというところまで近づいたその時、
「たった4体できたことを後悔させてやる!」
「そうだ!ここで討ち取ってしまえ!」
「聖騎士の力を見せてやる!」
「しかもここは宮殿に近い!十全以上の力を発揮できる!」
などと、思い思いのことを叫びながらとびかかっていくが、そんな騎士の人数も4人しかいない。
「「「「光よ、我を包め!」」」」
その瞬間騎士たちの体が光に包まれた。なるほど、騎士たちはそれなりに強いようだ。それこそ人の中では上から10人に入るだろう。しかし、相手が悪すぎた。
「火球!」
そう叫んだ騎士から風の妖精のようなものに向かって光をまとった炎の玉が飛んで行った。その玉は彼の足元で爆発し、煙を上げた。そこに騎士はためらいなく突っ込んでいき、剣を切り払った。
手ごたえあり、そう感じて自慢げだった騎士は煙が晴れてゆくにつれて、その顔を驚愕の色に変えた。
そこには風の妖精のようなものではなく、14、5歳といった感じの少年が立っていた。
「うーん、君ほかのと比べたら強いねー。でも足りない。力はもちろん、頭も足りない。残念だよ」
「なっ!貴様ら話せたのか!」
「あ、やっぱり知らなかった?まあしょうがないよね、僕たちが認めた人間を処刑したのはこの国の人間だったのだから。魔物と通じていた、だっけ?今になってはどうでもいいけどね。おっと、他のところはもう終わったみたいだね。」
「…そうだろうな。団長の私でもこうだったのだ。」
騎士は構えていた剣を下ろしながらそう答えた。
「あれ、冷静だね。攻撃されていないのに、負けを認めるんだ?」
「ああ。こちらの攻撃が通じない以上勝ちはないからな。その代わりいくつか質問に答えてくれないか?」
「え?その必要ある?どうせ死んじゃうのに?もしかして力の差も理解できていない感じ?」
「いいや、理解できてるとも。天地がひっくり返っても私に勝ち目はないだろう。」
「わかってるじゃん。それなのになんでかな?」
「この命を削ればもう少し抵抗できるのだよ。時間稼ぎにしかならないだろうが、面倒なことはしたくないだろう?」
騎士は体から命の輝きとも見れるこれまで以上の光が漏れ出した。
「…へえ、確かに面倒そうだね。いいよ何を知りたい。」
「私の剣は確かに核を断ち切ったはずだ。それなのになぜ消滅しなかったのだ?」
「あー、まあ気になるよね。剣で斬られるとは思っていなかったとはいえ、これは僕の失態だね。えっとね、僕たちはこの世界では死なないんだ。厳密には少し違うけど、そういうものだと思ってくれていいよ。」
「…そうか。つまり、邪神の眷属ということか」
「邪神っていうのが、よくわからないけどあってるんじゃないかな。で、もう終わり?」
「あともう一つだけ…」
「ちょっと、まだやってるの?」
空から、年格好が似ている3人の少年少女が降ってきた。
「さっさと終わらせて、私たちもいかなくちゃ。というわけでさようなら。」
「待てっ…」
「はあ、せっかくしゃべってたのに」
「そんなことより仕事優先。行きますよ。」
「そうだよ。闇のいう通り。」
「わかったわかった。」
そこには氷漬けにされた一人の騎士の遺体が残された。