prologue
有栖晴流人生は輝かしいものだった。
難関大学を主席で卒業し、数々の事業を執り行っている、有栖院財閥へ婿入りし、財閥を四大財閥に数えられるまでに成長させた。さらには、世界の貧困に喘ぐ人々を支援するために、個人資産より多くの募金をするだけでなく、自らが現地に赴き、彼らに救いの手をさしのべ、ノーベル平和賞を受賞した。
そんな彼を世間は聖人君主と崇め、著書「素晴らしい日本人10選」にて西郷隆盛や野口英世らと肩を並べた。
しかし、薔薇色の人生を歩んできた半面で、茨のような青春時代を過ごしていた。
高校時代に、妹をとある事件で失い、そのことで両親は鬱病になり自死してしまった。そんな絶望の肴にいた彼を慰め、励まし立ち直らせてくれた、幼馴染は交通事故でなくした。それでも彼が自死を選ばなかったのは、有栖院 唯香の存在のおかげであるのだが、このことはまた次の機会に語ろう。
そして、今晴流は病院の一室にて、最愛の家族たちに囲まれていた。
ホルター心電図の、「ピッ ピッ」っという音だけがその清潔な空間に響いていた。
「お前たち、仕事はどうした?今は一番忙しい時期じゃろ、なぜこんなところに集まっておるのじゃ。」
晴流は、ベットに横になり、家族たちを見渡す。
そうそう面子である、晴流の子息たちは大成しており、大手企業の社長や、東京都知事、文部科学大臣、総理大臣夫人など、こんなところで暇を持て余していい者たちではないのだ。
「父さんが危篤状態だからって来てあげたのに、そんな言い方はないだろ?でもまぁ、そんなことを言えるだけの元気があるなら、まだまだ余裕そうだな」
長男が、瞳に涙を溜めながら震えた声で言う。彼は今有栖院財閥のトップである。
「早く退院して孫の顔を見に来てよ、あの子ったらじいじに会いたいって聞かないの、あの人もまたパパと食事がしたいって言ってたわ、だがら、だから・・・」
長女は、涙を抑えきれず、母に似たとても整った顔をくしゃくしゃにしている。
その後も子供たちは晴流に思い思いに語り掛けていく。そのすべてを聞き届けた晴流
「あぁ、自分はなんて幸せ者だろうか」と心の底から思いながら口を開く
「お前たち愛しているぞ」
そこで彼の一生は幕を閉じた。
素人なので駄文ですが、なるべく読みやすく書けるように努めますのでよろしくお願いします。