第9話:ダウン
調子に乗りました。
今では反省しています。
でも後悔はしていません。
日曜日、僕はものの見事に風邪でダウンしていた。
そりゃあ雨の中馬鹿笑いしながら全力疾走してたらお医者さんの世話になるよなあ。
いや、どっちかというと警察のお世話になるのかな?
うう、警察の皆さんごめんなさい、悪気はなかったんです。
ちょっとハイになっちゃっただけでやましいことは何もないんです。
だから任意同行は勘弁してください……。
「誠一、おかゆ出来たけど、食べられそう?」
「うう……、ごめんなさい……って詩遠?どうしてここに?」
「なんでって……、看病してるからに決まってるじゃない。元々の予定の遊園地は流れちゃったしね」
そうなのだ、本来なら今日は詩遠のために遊園地に遊びに行くことになっていた。
が、しかし、僕はこの有様である。
遊園地のチケットは今週までというか今日までだったので一人で行って楽しんでおいでと言ったのだが、詩遠は看病するといって頑として譲らなかった。
あんなに遊園地楽しみにしてたのに……、いいのかな?
「全く……、どうして傘持ってるはずなのにずぶ濡れになってるかな誠一は」
「たまには傘を差さずに雨を浴びるのもいいものだよ……?」
「それで風邪引いてたら世話ないでしょうが」
「うう、返す言葉もございません」
詩遠には本当に悪いことをした。昔は平気だったんだけどなあ。やっぱり年かな……?高校生なのに……。
「それで、おかゆ食べるの? 食べれないの?」
「あ、食べる食べる」
僕は上半身を起こした。うー、ぐるぐるしてきもちわるい……。ぼーっとする……。
「あれ…? 詩遠が作ったおかゆにしてはご飯が白い……レトルト?」
「おかゆくらい普通に作れるわよ! 私のことなんだと思ってるの!」
「んー、料理下手?」
「病気が治ったら覚えてなさいよ……」
詩遠の作ったおかゆは普通においしかった……、成長したなあ詩遠。
……
…………
「ご馳走様、ぷはー、おいしかった〜」
「そう? 食欲があるならよかった」
食欲が満たされると、体が眠りを求めているのか睡魔が襲ってきた。
「じゃあ僕一眠りするね……、遊園地の埋め合わせは絶対にするから」
僕がそう言って横になると、詩遠は苦笑して僕の額を撫でた。
「病人はそんなこと気にしないで、体を休めることだけに集中しなさい」
詩遠の撫でる手が心地よくて、僕はゆっくりと眠りに落ちていった。
「やっと寝たか。やれやれ、そんなに気にしなくてもいいのに……」
誠一が眠ったのを確認して、私は撫でる手を止めた。
やっぱり誠一はわかってない。
重要なのは誠一と一緒に過ごすことなのだということを。
私にとっては誠一のお世話をするのは、遊園地に行くのと同じくらい楽しいから。
だから私は満足している。
でも、せっかく埋め合わせをしてくれるなら、ちょっとだけ期待していようっと。
「さて、食器片付けちゃおうっと」
私がベッドの傍に置いた椅子から立ち上がろうとすると、引っ張られるような抵抗を感じた。
「? ……あ♪」
私は思わずにんまりしてしまった。
だって、誠一がベッドから手を伸ばして私の服のはじを握っているのだ。
つまり誠一は私にここにいて欲しいってことで……うふふ♪
「もう、しょうがないなあ。甘えん坊なんだから誠一は〜」
笑顔になるのを止められない私は、幸せな気持ちで椅子に座り直した。