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第8話:雨とハム

「あれ、降って来た」


最後の授業が終わると同時に先ほどまでどんよりとした曇りだった窓の外の景色が雨模様に変わっていた。


「あー、天気予報確認するの忘れてた……」


「誠一、傘忘れたの?」


詩遠が僕の方に寄ってきた。詩遠はそのあたりきちんとしているから傘も持ってきてるんだろうなあ。あ、そういえば朝詩遠が傘持ってるの見たわ、すっかり忘れてた。


「せ、誠一、よかったら私の傘に……」


「んー、ちょっと待って、確かこのあたりに……」


僕は自分の鞄を漁る。自分自身忘れっぽいことを自覚しているので、もしもの時のための物をかばんの中に放り込んでそのままほったらかしにしているのだ。


新品の消しゴム、違う。


サメのパペット人形、違う。


アサガオの種、これも違う。


イヤホン、タオル、ゴミ袋、プラスのドライバー、エトセトラエトセトラ……、あ、あった。


「おりたたみがさ〜」


思わず未来から来た猫型ロボットのまねをしつつ、ちょっとくたびれた折り畳み傘を取り出した。


「ん、どうしたの詩遠?僕の鞄に何かついてる?」


「いや……、相変わらず魔境とつながってる鞄だなって思って」


魔境か…、言いえて妙かもしれない。よし、この鞄は魔境カバンと命名しよう。


「さて、無事傘も見つかったし、帰ろうか?」


「うん、……あ!忘れてた!友達の勉強見る約束してたんだった、悪いけど先に帰っててくれない?」


「ついこの間テスト終わったばかりなのに勉強してるの?」


勉強熱心な人もいたもんだ。


「その子追試に引っかかってるの」


あ、納得。


「それじゃ、また後で」


「うん、また後でね」


詩遠と別れ、僕は玄関口までやってきた。うわー、結構降ってるなあ。


……ん? あそこにいるのは……知らない人だ。


僕の目に留まったその女生徒は、一言で言うとおろおろしてて、二言で言うととてもおろおろしていた。


空を見上げたかと思えば傘立てに目を移し、次の瞬間にはぶんぶん首を振って自分に拳骨をかましていた。


んー、一人コントの練習? それともパントマイム? 彼女は一体その身振りから僕らに何を伝えようとしているのか。僕にはさっぱりわかりません。ただわかるのは彼女は見ているだけで面白い。うん、とても失礼だ。


なんとなく雰囲気や表情から困ってることだけは伝わってくる。


僕は一般的良識を持つ男子高校生として、声を掛けてみることにした。


「あのー、どうかしました?」


「ひゃい!?」


噛んだ、すごい勢いで噛んだ。


「とても不審な動きをしているので声を掛けてみたんだけど」


「ふ、不審!? ちちち違うんです実はそのわたしとてもおっちょこちょいで今日も朝天気予報ちゃんと見て雨だって思ってたのにうっかり忘れてしまってそれで、その、あの……すみませんすみません!」


すごい勢いで喋りだしたかと思ったら急にぺこぺこ頭を下げだした。なんというか小動物ちっくな子だなあ、ハムスターに似てるかも。


とにかく、仮名ハムスター子さんは雨なのに傘を忘れて立ち往生していた、というわけか。

うーん……、よし。


「さて問題です、これは何でしょう?」


僕は手に持っていたそれをハムスター子さんに突きつけた。


「え、折り畳み傘……?」


「正解! 正解者にはプレゼントが贈られます、ではこれをどうぞ」


僕は自分の折り畳み傘を半ば無理やりハムスター子さんの手に握らせた。


「え、え?」


ハムスター子さんが困惑してる間に、魔境カバンの中からごみ袋を取り出して、その中に魔境カバンを突っ込んだ。これでカバンが濡れることはないだろう。


「今週はここまで、次週またお会いしましょう〜」


「え、ええ、えええっ!?」


ゴミ袋をきっちり閉めた僕は雨の中に躍り出た。うひゃー! 冷たいー! でもなぜかテンションあがるー! やっほう!


「ちょ、ちょっと待って……」


「待ちません! ではさらば〜!」


うひー! 雨粒が顔に当たるー! さみー! 服重いー! あははははははは! 意味もなく楽しーー! 僕馬鹿っぽいー! こんな雨には負けないぜー! ひゃっほーーーー!


いいことした後は気分いいなぁ、このまま家までダッシュだー! あはははは!





「……というか、誰……?」




今回の誠一はボケというか馬鹿っぽい…(汗)

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