第6話:凹
(※)詩遠視点です
「はぁ…………」
私は自分の部屋で一人、特大のため息をついていた。
この間の失敗が尾を引いている……わけではない。失敗なんていつものことだし、自分で言ってて凹むけど。
そんなことより、私の心に暗雲を立ち込めさせているのは今日の放課後のことだった。
誠一が、今日は一緒には帰れないと言った。
それ自体は別に普通のことだ。私たちにも互いに友人がいるし、四六時中一緒というわけじゃない。もちろんそうなったらとても素敵だなとは思うけれども。
そんな私もそれならばと今日は友達に誘われて駅前に繰り出していた。
そこで……見かけたのだ、誠一を。
遠目だったけど間違いない、もう15年も見ているのだ。私が誠一を見間違えるなんてありえない。
問題は、誠一が他校の制服を着たとても可愛らしい女の子と出てきたということだった。
すぐに追いかけたかったけれど、二人はすぐに人ごみにまぎれてしまってとても探せそうになかった。
私は友人たちに顔色の悪さを指摘され、半分魂が抜けた状態で帰宅した。
ねえ……誠一、あの子は誰なの?
今日の用事ってあの子と会うことだったの?
誠一とその女の子はとても楽しそうに笑い会っていた、まるで親友か恋人同士のように……。
もしかして私には内緒で付き合ったりしているのかな…。
「はぁ………………………………」
ため息が止まらない、ため息をつくと幸せが逃げるというけれど、私が今日だけで逃がした幸せは何リットルぐらいになるんだろう? それともグラム? 今まで逃げた幸せがあればもうすでに誠一とラブラブできるようになっていたのかな?
「はぁ〜…………………………」
あー……だめ、落ち込みすぎでまともにものが考えられないよぅ……。
コンコン、と窓を叩く音が聞こえた。
私の肩がびくりと震えた。私の部屋の窓をノックする人なんて一人しか考えられない。
もはや習慣的にカーテンを開くと、そこには予想通りの顔があった。
「よっ」
先ほどまで私の頭を占めていた顔がベランダにあった。
「入ってもいい?」
「あ、うん……」
そこで私ははっと気がついて後ろを向いた。帰ってきて何もする気のなかった私は着替えを脱ぎ散らかしていた。そこには私の下着もあって……。
「や、やっぱりちょっと待って! 3分だけ!」
どん! ぴしゃん!
『うわわ! 落ちる落ちる落ちるーーーーーっ! 詩遠ヘルプミーっ!』
窓の外から何かが転がり落ちる音が聞こえたけど私は気にせず、とりあえず下着をたんすの中へ放り込んだ。
もうちょっと続きます