第47話:彼女の正直な気持ち
昼間、須藤の何気ない一言によって柄にも無くシリアスな気分になってみたりしたのですが、もしかしてこれはその報いなんでしょうか神様? 僕にはそんなにシリアスが似合いませんか?
正直、僕は途方にくれています。まさにとほほって感じです。
「う、ううう……どうせ私なんてみんなから小ばかにされてるのがお似合いなんですよ。朝倉さんみたいにスタイル良くなくってハムスターみたいにころころしてるからハム子なんてあだ名つけられるんですよ……ねえ、聞いてますか? 私大事な話をしてるんですよ?」
浴衣姿のハム子ちゃんはさっきからずっと壁に向かってぶつぶつと愚痴を言い続けている。
あそこに誰か見えてるんだろうか……見えてないといいなあ。
「ねえ誠一聞いてりゅ? わらしはねぇ、せーいちのそーいう煮え切らない態度はよくにゃいとおもうのよ。 ねえ聞いてる? ちゃんときこえてますかー?」
「聞いてる、聞いてるって」
「そう? にゃらいいんにゃけど……だからせーいちのそういう態度が……」
僕に正座を強要し、同じ説教をろれつの回らない口でえんえんと続ける詩遠。
今何回目だっけ、20までは数えたんだけど。
「ぐ〜……、うふふ、ハム子ちゃん可愛い、まるでお姫様みたいね……」
そして、全ての元凶である須藤はさっさと眠りの国に退散していた。
――――始まりは夕飯の席で須藤が一本のビンを取り出したところから始まった。
不思議な味のする須藤がジュースと言い張るそれがお酒だと気がついたときにはもうこんな状態だった。
僕も酔ってしまいたい……お酒に異常に強いらしいことが発覚したけどこの状態じゃあ全く嬉しくない。
「う〜、こら! ちゃんとはにゃしを聞きなしゃい!」
「はいはい、聞いてます聞いてます」
とにかく今は一刻も早く嵐が通り過ぎることを祈るばかりです。
「じゃあ、せーいちは……せーいちは…………どこにも行かない?」
「?」
あれ、今までと違う話になった?
「らってらって、せーいちってばずっといいかげんで、わらしはただの幼なじみで、いつも一緒だけどそれもいつ終わるかわかんなくて、せーいちは私の知らない誰かとどこかに行っちゃうんじゃないかって不安で、怖くて、たまらないの! だから、わらしは……」
僕は今とても間抜け顔でぽかんとしていたと思う。
これは、詩遠の本心?
本当はいつも不安だったの?
「らから……ふみゅう〜……」
「わっとと」
お酒が許容量を超えたらしく、ふらりと倒れた詩遠を慌ててキャッチする。
寝てしまったのか規則正しい寝息が聞こえる。
「……どうしたもんかなぁ」
すやすやと眠る腕の中のお姫様を見て、僕はさっきとは違う意味で途方にくれていた。