第43話:合流
「あ、あああー! あなたは!?」
「ひゃあ!」「ん?」
突然の大声に詩遠はびっくりしたようでぱっと身体を離してしまった。
周囲の人たちも驚いたみたいで僕の後ろ辺りをちらちらとうかがっている。
僕は大声を出した人を確認しようと背後を振り返った。
「も、もう! 驚かせないでよハム子ちゃん!」
「……ハム子ちゃん?」
そこにいたのは、いつぞやの傘借りっぱなしの女の子のハム子さん(仮)。
というか僕が勝手につけた名前のはずなのに本当にハム子さんだったの?
それに詩遠ともお知り合い?
なぜここに?
あかん、疑問がいっぱいで頭がついていかないや。
「す、すみません朝倉さん! でも私としては現在最優先でとまではいかなくともかなりの上位に属するやらなければならないことが目の前にありましてお叱りは後で受けますからちょっとだけ勘弁していただけないかと思いまして、でもお二人の邪魔をする気も毛頭ありませんので私の用事が済んだら存分にいちゃいちゃむぎゅ」
「は〜い、そこまで」
マシンガンの如く喋り出したハム子さんの口を手で封じたのは良く見知った顔だった。
「おはよ、時間通りだね須藤」
「本当はもうちょっと早く来てたんだけどね〜」
そう言って須藤はちらりと詩遠のほうに視線を向けた。
詩遠がどうかしたのかな?
「あ、渡瀬は会うのは初めてだよね? ウチの喫茶店の新人のハム子ちゃん、夏休みの間予定が無くって暇だって言うから連れて来てみました〜。
ハム子ちゃん、こっちは私の中学時代からの友人の渡瀬誠一よ」
「へぇ〜、そうなんだ。実は初対面じゃないけどね。よろしく〜」
「ぷはっ! よ、よろしくお願いします」
お互いに深々と挨拶をする。
うん、やっぱり初対面のときの挨拶って重要だよね。初対面じゃないけど。
「そ、それでですね、傘を……」
何か言いかけたハム子さんを詩遠がさえぎった。
「ほらほら二人とも、早く切符を買ってこないと電車が来ちゃうよ?私と誠一の分はもう買ってあるから」
「それもそっか、ハム子ちゃん行くよ〜」
「あ、でも、う〜……、はい……」
ハム子さんはしばらく唸った後、僕への用事は後でもいいやと思ったのか大人しく須藤の後を付いていった。
さあ、楽しい旅行の始まりだ。