第42話:旅行へ行こう
昨日の夜、須藤から電話がかかってきた。
『実は親戚が海沿いの旅館を経営してて、タダで泊まれるんだけど遊びに行かない? もちろん朝倉さんも一緒に』
その場で詩遠に行くかどうか確認を取り(なぜか少しも迷わずに返事が来た)、了承したので行くと返事をした。
そして今、僕と詩遠は待ち合わせの駅で須藤を待っていた。
「っと、ちょっと早く来すぎちゃったみたいだね」
あたりを見回しても、須藤の姿は見えなかった。
まだ集合30分前だし、仕方がないかな?
……あれ、詩遠からの返事が無い。
「…………詩遠?」
「……え、う、うん! そ、そうだね!」
……そういえば、昨日の夜辺りから妙に詩遠が緊張しているような気がする。
よく見ると右手と右足が同時に出てるし、なんてべたな……。
ん〜、親抜きで旅行するなんて中学の修学旅行ぐらいだったから緊張してるのかな?
「詩遠、ほらリラックスリラックス。子供だけのお泊りで緊張するのは分かるけどさ、きっと楽しい旅行になるって」
「そういうことじゃないんだけど……、ありがと、心配してくれたんだよね」
僕が気遣っていることに気がついたのか、詩遠はぎこちない表情から微笑を見せてくれた。
「うん、やっぱり詩遠は笑ってた方がかわいい」
僕は思ったことを素直に口に出した。
「なっ……! もう、そういうことすぐ言うし」
あれ、かわいいって言うの実はあんまり嬉しくなかったのかな?
「もしかしてあまり言わない方がいい?」
「ううん……、私には、いっぱい言って欲しい……かも……」
「……」
「…………はっ!?」
自分が言った事に気がついたのか、詩遠の頬が見る間に赤く染まった。
「いっ今の無し! 無かった事にして! お願い!」
「かわいいね〜詩遠は〜、うん、かわいいかわいい」
僕はかわいいを連発しながら詩遠の頭を撫でてあげた。
「うう……、恥ずかしいからヤメテ……」
「……出て行きづらい、あの空間には入り込めない……」
ちょっと遠くで出るタイミングをうかがっている須藤には、僕も詩遠も気がつかなかった
だいぶ投稿が遅れてしまいました