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第39話:暑い夜に

僕は寝つきは良い方だけど、今日は夜中になっても目が冴えていた。

熱帯夜だったからかもしれない。

夏だからって無理に暑くしなくってもいいのにね、いや、暑いからこそ夏なのか。

じっとりとかいた汗を拭って、空気を入れ替えようと僕は窓を開けた。


「「……あ」」


僕と同じように寝付けなかったのか、正面にある見慣れた窓には詩遠が窓の縁に体を預けていた。


「こんばんは、詩遠」


「誠一も眠れないの?」


「うん、何だか眠れなくって、寝付けるまで話でもしない?」


「わかった、それじゃあそっちに行くね」


パジャマ姿の詩遠が夜の闇の中を危なげなく窓を乗り越えてこっちまでやってくる。

さすが目をつぶってても自分の部屋から僕の部屋まで来れると豪語するだけある。

たぶん僕も出来るけど。


部屋に入ってきた詩遠は僕の隣に腰を下ろした。


明かりが消えているせいか空には星がよく見える、これで暑苦しくなければ良い夜なんだけどなあ。


「さて、それじゃあ何の話をしよっか?」


「そうだねー……、それじゃあお題は『今だから言えること』で」


僕は思いついた適当なことをお題にした。今は特に話し合いたいことがあるわけじゃないしね。


「今だから言えることか〜……、誠一は何かあるの?」


「そりゃあ色々とあるよ、例えば……小学生の頃詩遠のところにやってきたサンタは実は僕の変装だったとか」


「……いや、流石にそれは知ってるけど」


「ええっ! 何で知ってるの!?」


白い髭とかサンタ服とかプレゼントを入れる大きな袋まできちんとそろえたのになぁ。


「むしろあの変装でばれてないと思ってる方がすごいと思うよ、声とかそのままだし、明らかに小学生の体格だったし、煙突じゃなくって窓から入ってきたし」


「……まあ、小学生の変装だからね」


ばればれだよ、小学生の僕……。


「詩遠はなにかある? 今だから言えること」


「う〜ん……、思いつかない、かな?」


「無いの?」


ひとつくらいありそうなものだけど。


「今はまだ言えないこと、ならあるけど」


「え、なになに? どんなこと?」


「まだ言えないって言ってるでしょ、ないしょです」


詩遠はそういってそっぽを向いてしまった、うーん、ちょっと耳が赤い? 風にあたりすぎたかな?


「……いつか、必ず言えるようになるから」


「そっか、それじゃあそれまで楽しみにしてる。そろそろいい時間だし、僕はそろそろ寝るから詩遠も戻りなよ」


「うん……誠一?」


帰り際に詩遠が振り返った。


「なに?」


「……おやすみ、また明日」


「また明日、おやすみ〜」


詩遠が部屋に戻るのを確認して、僕はベッドに戻った。

いつの間にか、暑苦しさは気にならなくなっていた。


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