第38話:夏の風物詩
「ねえねえ詩遠、そろそろ小腹が空かない?」
昼下がり、僕の部屋でごろごろしてる詩遠に僕は問いかけた。
ちょっとワクワクしてるのが顔に出てるかもしれないけど気にしない。
「ん〜、空いてるといえば空いているような……って感じかな?」
「それじゃ、ちょっと待ってて。取ってくるから!」
「何をとってくるの?」
僕は詩遠の疑問には答えずにあるものを取りに台所へ走った。
そして3分後。
「じゃ〜〜〜〜ん、カキ氷機〜〜!」
「おお〜〜〜〜!」
満を持して登場したカキ氷機(ペンギン型)に拍手してくれるノリのいい詩遠が好きです。
昨日から何だか無性に食べたくって準備してたんだよね。
もちろん器もシロップも準備万端、冷凍庫には大量に氷を作っておきましたとも。
「シロップはイチゴ味とメロン味があるけど詩遠はどっちがいい?」
「確かカキ氷のシロップって色が違うだけで中身は一緒だっていう話だよね」
「……」
「……」
「僕はイチゴ味にするね」
「あ、じゃあ私もイチゴがいいな」
情緒の無い話は華麗にスルーし、シャリシャリと氷を削っていくとだんだんカキ氷の山が器にたまっていく。
このカキ氷の出来ていくさまって夢や希望があると思うんだよね。
「よし、これにイチゴシロップをかけて……完成! まずは詩遠からどうぞ」
「いいの? ありがと〜、それじゃいただきま〜す!」
スプーンでひと掬いし、ぱくりと一口。
「ん〜〜! 冷たくっておいしい〜!」
ああ、とてもおいしそう……僕も早く食べたい!
全力で削ったせいかあっという間に僕の分のかき氷は出来上がった。
「いっただっきま〜す!」
ぱくぱく……うん、おいしい! やっぱり夏はカキ氷だよね!
……
……
きぃー……ん
「うう……」
「いたたた……」
1分後、僕らはカキ氷の洗礼にのた打ち回ることになった。
うーん、これぞ夏の風物詩。




