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第4話;side詩遠

「おじゃましま〜す、っと誠一寝てるの?」


私がいつものように窓から誠一の部屋に入ると、誠一は制服のままベッドに横になって寝息を立てていた。


今日まで3日間、うちの高校では中間テストが実施されていて、私たちは(というよりは誠一は)必死になって勉強していた。


誠一は赤点を取ると小遣いカットの憂き目にあうので、私が帰った後も一人徹夜で勉強していたらしい。


お陰で今日の下校中、誠一は半分眠っていて何を言っても「あ〜」とか「う〜」とかしか言わなかった。


気になって見に来てみればこの通りだ。


「もう、ホントしょうがないなあ」


今から起こすのもかわいそうだから制服のままなのは大目に見てあげることにする。


私は誠一に毛布をそっと掛けてあげると一瞬むずがる様な顔をしたけど、すぐにまた安らかな寝息を立て始めた。


そのあどけない寝顔を見ていると私は自然と笑顔になる。


こんなところでも私は自分の気持ちを再確認する。


ああ、私はやっぱり誠一のことが大好きなんだなあって。


誠一とは子供の頃からずっと一緒だった。


色々なことで気が合うし、小中高とずっと隣にいたのは誠一だった。


いつからこの気持ちが芽生えたのかはわからない。


誠一のことを好きだと自覚したのは私がまだ小学生の時、見知らぬ女の子が誠一と仲よさそうに話していたのを見たときだった。


純粋に嫌だ、と思った。


そして気が付いた、私が誠一のことやきもちを焼くくらい好きだって事に。


その女の子はしばらくすると誠一のそばから離れていった。


後で友人に聞いた話だが私は無意識のうちに威嚇していたらしい。


毛を逆立てている猫にそっくりだったよと笑いながら話してくれた。


小学生の頃は誠一の一番仲の良い友人で満足していたけれど、中学生、高校生になるとそれでは我慢できなくなってきた。


直接好きだなんて恥ずかしくて言えないけれど、間接的には色々やった。結構大胆なこともやった。


ふたりきりで出かけるために誠一を連れ出したり、夏場にかなりきわどい格好で誘惑してみたり、誠一のベッドで無防備に寝たふりをしてみたりもした。


でも、未だに私たちの関係は仲の良い隣人のままだった。


ひとつ思惑が外れる度に絶対に振り向かせてやると新たに闘志が燃え上がった。


そして今日まで連敗記録を更新していた。


ベッドの上の寝顔がとても愛おしく、少し憎らしい。


ほっぺたに手を添えてみる。


柔らかくて、少しごつごつしている誠一の感触。


この感触は嫌いじゃない。


「早く気付け、馬鹿」


聞こえていないのを承知でそう呟いた。


あーあ、ほんとに気持ちよさそうに寝ちゃって……。


……。


…………。


いま、キスしてもばれないよね……。


はっ! な、何を考えてるの詩遠! そんなのだめよ、フェアじゃないし、そんな誠一の気持ちを無視してそんな!


でも、ちょっとくらいなら……いいよね?


右を確認、……誰もいない。


左を確認、……誰もいない、当たり前だけど。


すーはーすーはー深呼吸、やりすぎてちょっと頭がくらくらした。


「…………よし」


そっとベッドの傍に跪く。


やだ、顔がすごく熱い。胸もどきどきしてきた。


落ち着け、落ち着け私、ちょっとだけだから、少しチュッとするだけだから!


それでちょっとし、舌を入れちゃったりとか!


キャー! キャー! そこまでしていいの!? やりすぎじゃない?


それで誠一が起きちゃったりしたら…。


(想像中)

「し、詩遠……」

「ご、ごめんね誠一、寝てる隙にこんなこと……」

「詩遠……ホントは僕もずっと……」

「ほ、本当!?」

「詩遠……好きだよ」

『どさっ(ベッドに押し倒される音)』

「あ……、せめて電気は消して……」


キャーキャーキャー!!


そ、それからそれからそのままできちゃった婚とか!

学生結婚!?

純白のウェディングドレスを着て、家族や友達に祝福されながら誓いのキスをして、学校中のみんなから夫婦って冷やかされて、でもそんなの気にならないくらい二人とも熱々でお昼には「はいあなた、あ〜んっ」とか嬉し恥ずかしイベントがあったりとか!?


そして誠一が「おいしいよ詩遠」って優しく耳元でささやいてくれちゃったりしちゃったり!


それからそれから……


「ん〜〜〜?詩遠……?」


「はい、あなた……」


「……詩遠? どうしたの? ベッドの傍でぐねぐねして」


「そんな、ベッドは夜まで待って……、もう、本当にけだものなんだから、でもそんなところも……」


「おーい、詩遠さーん、聞こえますか〜?」


ふと気がつくと、誠一が私の目の前でひらひらと手を振っていた。


「……」


「……」


「ひゃあああああああ!」


「うわぁ!」


「せせせせせせせせせせせせせせ誠一!?」


「たぶん詩遠の知っている誠一で間違いないと思う」


いかん、落ち着け私! ここで落ち着いて状況を説明…できるかっ!


「どうしたのさ、なんかあった?」


まずいまずいまずいまずいまずい…! かくなるうえは!


「あははははははははは! な、なんでもないなんでもない! ちょっと顔見に来ただけだから! それじゃ!」


必殺! 笑ってごまかす、そしてそのまま逃亡!


「え、え?」


まだ寝起きで頭の働いてない、頭が働いてもこの状況はよくわからないとは思うけど、誠一に背を向けて、私は自分の部屋へさっさと逃げ帰った。















「はあ……」


ぴしゃんと窓を閉めて、そのまま私はベッドに突っ伏した


「今日もまた敗北です……」

詩遠はらぶ担当みたいです

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