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第33話:雨とハムふたたび

今日は午後になってからずっと雨が降っていて、放課後になっても晴れる気配は無かった。


「ねえ誠一、今日傘は持ってきてるの?」


「忘れた!」


「威張るな!」


言い訳するわけじゃないけど、鞄の中に折り畳み傘を入れてたと思ってたら入ってなかったんだよね。


「しょうがないなあ、私の傘に入れてあげるよ」


そういう詩遠はなぜかちょっと嬉しそうだ。

僕が傘を忘れると詩遠が嬉しがる。

風が吹けば桶屋が儲かる……みたいなものかな? 語感が似てるから言ってみただけだけど。






「図書室に本を返しに行ってくるからちょっとだけ待ってて」


「わかった、先に下駄箱に行ってるね」


詩遠と階段のところで別れて僕は一人下駄箱までやってきた。


「あ! あの、すみません!」


「ん?」


声を掛けられたのでそちらを振り向くと、小柄な女子生徒がちょっと挙動不審な感じでこちらに近づいてきた。


……だれだっけ? 仕草とかに見覚えがある気がするんだけど。

こう、小動物っぽい感じのアレ……ハムスター?

あ、思い出した。この間傘が無くって困っていたハム子(仮)さんだ。

どうしたのかな?

まさかまた傘が無くって困ってるとか?

でも今日は僕も傘持ってないし……困ったなぁ。


「こ、この間はありがとうございました。おかげで濡れずに助かりました。

 その、傘を返そう返そうとしていたんですけどなぜかタイミングが悪くってなかなか返せなくって、

 こんなにのびのびになってしまってまことに申し訳ないというか私ったら何で返せないんだろうとかあの、その、すいませんでした!

 こ、これお返しします!」


ぺこぺこ頭を下げて見覚えのある折り畳み傘を僕に差し出すハム子さん。


うーん、やっぱり落ち着きの無いところは回し車を回すハムスターっぽいなあ。


僕は、折り畳み傘と鞄以外何も持っていないハム子さんを見て、気になったことを聞いてみた。


「……で、自分の傘は持ってるの?」


「…………あ」


持ってないのか……。

ハム子さんはハムスターなだけでなく天然さんでしたか。


「あ〜、じゃあその傘使ってよ。僕は傘のあてがあるからさ」


「す、すいません……。それじゃあ明日返しに行くのでお名前とクラスを聞いてもひいっ!」


ハム子さんはいきなり悲鳴を上げでずざざざっと数メートル後ずさった。

どうしたんだろう、まるで鬼の顔を見たような反応だ。


「どうかした?」


「いえいえいえ! なんでもありません、ないったらないです! それでは私はこれで!」


それだけ言ってハム子さんは僕の傘をさして慌てて帰っていった。


「なんだったんだ?」


「誠一」


僕が首をひねっていると後ろから聞き慣れた声で名前を呼ばれた。


「詩遠、もう本は返してきたの?」


「うん、ちょっと前から後ろにいたんだけど気付かなかった?」


「全然気が付かなかった」


「そう、……ならいいんだけど。ほら、帰ろう?」


傘を差して早く入れと催促する詩遠。


う〜ん、まあいいか。

急ぎの用事でもあったんだろうきっと。






「こ、こわかった……あの人の背後に鬼が……思わず逃げ出しちゃった……」


ハム子は帰りながら先ほど見たもののせいでガクガク震えていた。

ハム子さん久しぶりの登場です。

いつかハム子さん自己紹介できるかなあ……。

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