第25話:最強のインパクト
僕は自室に向かうために自宅の階段をのぼっていた。
何だか今日の詩遠はおかしい。
なにがおかしいって昨日の夜からずっと挙動不審だし、ずっと『本当にするの?いやでも……』とか呟いてる。
極めつけに下校途中で30分ほど時間をつぶしてから帰宅することを厳命されてしまった。
きっかり30分コンビニで時間をつぶしている僕も僕だなあ、と思いつつ自室のドアを開いた。
「お、お帰りなさいませですにゃん、ごしゅじんさま!」
パタン。僕は迷わずドアを閉めた。
…………なに今の?
僕の目がおかしくなっていなければなぜか詩遠がネコミミメイド姿で三つ指ついてお出迎えしていたような……?
壮絶に似合っているのがさらに現実味を薄くさせていた。
帰り際に頭でも打ったかな? 僕か詩遠かあるいはその両方が。
……うん、きっと幻覚だな、疲れてるんだよ。
僕は心の安定のためにそう結論付けた。
ほら、今度ドアを開ければそこにはいつも通りの僕の部屋が……。
「……幻覚じゃなかったか」
そこには顔を真っ赤にして頭を抱えたネコミミメイド様が鎮座していた。
「せ、誠一! ち、ちがうの! これはその、えっと、あう〜〜〜〜っ!」
あうあう言いながら慌てる詩遠。
「落ち着いて詩遠、大丈夫だから、分かってるから」
「ほ、ほんとう……?」
「詩遠がネコミミメイドになりきってしまうくらいネコミミメイドが好きなのは分かった」
「ちがうー! ちがうのー!」
違うらしい。
しかし……あれだね、詩遠がネコミミメイドの姿をしていて、なおかつ真っ赤に染まった顔で瞳を潤ませて見つめられると……こう……湧きあがる何かがですね。
はっ! 違う! 確かにメイド好きで猫好きだけど僕にそんな性癖は無い! ……と信じたい。
「誠一?」
こてん、と首をかしげる詩遠。
「大丈夫、僕は冷静だ。落ち着いていこう」
「は、はぁ……?」
詩遠は怪訝な表情をしたままだけど僕はそれにかまっている暇は無い。
どうにかしてこの状況を打破しなくては。
そうだ、まずは情報を集めなくては、情報を制すものは世界を制すって言うくらいだし。
うん、僕いい感じに錯乱してるね。
「詩遠、一体全体どうしてそんな格好してるの?」
「それは、その、須藤君が……」
須藤? ここで何故須藤が出てくるのか。
「誠一は猫が好き、そして誠一はメイドスキー、すなわちこれを掛け合わせたネコミミメイドこそ最強のインパクトを与えられるって……」
須藤、僕がメイドスキーだってことは誰にも話さないって男と男の約束をしたのに……あ、いまあいつ女の子だっけ、それじゃあしょうがないか。
確かに錯乱するくらい衝撃はものすごいものだったけど……僕に衝撃を与えてどうするつもりなんだろう?
しかし須藤の奴、詩遠にこんな格好をさせるとは……今度何か奢ってやろう。
というかこのメイド服は須藤の私物?
女装だけでなくコスプレまで取り揃えていたのか……。
「わ、私着替えてくる!」
いろんなものに耐え切れなくなったのか、詩遠はネコミミメイドのまま自分の部屋へと帰っていった。
「ちょ、ストップストップ詩遠!!」
慌てて僕は詩遠を捕まえる。
ネコミミメイド姿で真っ赤な顔して外に出て行かれたら外聞悪すぎですから! もし見つかったら近所の奥様方の格好の標的になるから!
「はーなーしーてー!」
「出て行くならここで着替えてからにしてー!」
やってしまった感があります……。
今更な感じですが、コメント・感想は大歓迎です。
読んでいる皆様が感じたこと、批評、もっとこいつの出番を増やして、詩遠にこんな格好させて! など、送ってくださるととても嬉しいです。
お待ちしています。
この話はもうちょっと続きます。