第24話:相談してみよう 詩遠編
「いらっしゃいませ……、あ、朝倉さん」
「こんにちは須藤君、今ちょっと時間取れないかな?」
「少しなら大丈夫、休憩取ってくるから座って待っててよ。てんちょー! 休憩はいりまーす!」
私は以前巨大パフェを食べた喫茶店に一人でやってきた。
目的は須藤君に会うためなんだけど……、本人を前にしても今でも信じにくい、須藤君女の子にしか見えないんだもん。
きっと前回の帰り際にネームプレートを見なかったら分からなかっただろう。
人間変われば変わるものだね。
「お待たせ、朝倉さんが尋ねてくるなんて珍しいね。どうしたの?」
「うん……、誠一のことなんだけど」
「渡瀬? 渡瀬がなにかしたの?」
「そうじゃなくって、むしろ何にもしてくれないというか……」
私は須藤君に相談に来ていた。
男と女の両方の視点を持ち、誠一のこともよく知っている彼女(?)なら私には無い案を出してくれるかもと期待してのことだった。
「どういうこと?」
「その、二人っきりでいても添い寝しても誠一手を出してこないし、誠一に女として相手にされてないみたいで……」
言ってて自分の頬が赤くなるのを感じる、振り返ってみてみると私って相当恥ずかしいのでは……?
「なるほどなるほど、そういうことね」
須藤君は頷いて少し考えるしぐさをすると、ぴんと人差し指を立てた。
「きっと朝倉さんの言うとおりだと思うよ。渡瀬は朝倉さんのことを『女』ではなく『朝倉詩遠』として見ているんだよ」
「それって、誠一にとって私は対象外ってこと……?」
もし本当にそうならものすごくショックなんですけど。
「それは無いと思うよ。ほら、誠一って思考回路が特殊だからさ、どちらかというと男女の関係とかそういうのを超越したところに位置づけられてるんだと思う」
それに、と須藤君は続ける。
「あいつって他人優先みたいなところがあるでしょ?たぶん渡瀬は朝倉さんの心情とかを優先するあまり自分の欲とか恋愛感情には無頓着になってるんじゃないかな?」
「それは、私も薄々感じていたけど……」
例えば私が誠一に抱きつくとする。誠一は女の子が抱きついて恥ずかしいと思う前に、私が抱きつきたいんだから好きにさせてあげようって考える。
結果、誠一は私の抱きつきをしょうがないなあと思いつつ受け止めてくれるというわけだ。
少しの間沈黙して、須藤君は話を続けた。
「渡瀬は朝倉さんが恋人になってくれって言えばなってくれると思うよ。でもそれは朝倉さんの気持ちを配慮してのことで、渡瀬が望んだからじゃない」
私が告白したとき、確かに誠一は受け止めてくれるだろう。……『しょうがないなあ詩遠は』みたいな顔をして。
――――でも。
「それは、嫌。私は、誠一に求められたい。誠一に、心の底から好きだって言って欲しい」
そんなんじゃ意味がない。
私は誠一を愛したいんじゃない。
お互いに愛し合いたいんだから。
「朝倉さん……、私が男の子だったら間違い無く惚れてるよ」
いや、あなた男の子ですから!
私の無言の突っ込みに須藤君が気が付くことは無かった。
「朝倉さんの目的のためにはまずは誠一の意識を変えなきゃいけない。しかし相手はあの超天然、だいぶ荒療治をする必要があるね」
須藤君はニヤリと笑って『作戦』の説明を始めた。
今回はちょっとシリアス風味でした。
次回へ続きます。