第23話:部活動
「そういえば今さらだけどさ」
「うん?」
「詩遠って高校では部活動とかしないの?」
ふと出てきた疑問を僕は詩遠にぶつけてみた。
詩遠はなんというか超人じみたスペックの持ち主だから運動部なんかは目をつけてるはずなんだけど今、まで僕はお目にかかったことが無い。
「ほんっと今さらだね……、高校生になってどのくらい経つと思ってるの?」
「えへへ〜」
「笑って誤魔化さないの」
確かに1学期も半分以上過ぎてから言うような疑問じゃなかったかな? 勧誘がこないからすっかり失念していたよ。
「んー、入学してからすぐに全部の部活を回ったのよ」
「ふんふん」
「そこで私は部活に所属する気は一切無いってきっぱり入部を断ったの。他の人に迷惑だから勧誘にも来ないでくださいって」
「そんなことしてたんだ、でもそれだけで勧誘がぱったり来なくなるものなの?」
しつこい奴とかどこにでもいると思うんだけど。
中学1年生のとき、詩遠が他の部活に所属しているにもかかわらず休み時間のたびに勧誘に来ていた男の先輩とかいたし。
あれは部活動って言うより詩遠目当てみたいだったけど。
あんまりしつこかったから詩遠の部の先輩に撃退を協力してもらって、なぜか最終的に屋上から逆さ吊りにされてたっけ……合掌。
「懇切丁寧に説得して、最後にはみんな納得してもらえたわ」
ニヤリと笑う詩遠。あれ、なぜか寒気が……、どんな説得だったんだろう?
「そういえば詩遠、中学のときはバスケットやってたけど、続けなくてよかったの? 県大会でいいところまで行ったのに」
中学のときはあんなに頑張ってたのに、高校で続けようとしないのは何でだろう?
うちのバスケ部が弱小って話は聞かないから詩遠が頑張れば上を目指せるかもしれないのに。
「うん、バスケ部からは特に熱心に誘われたんだけど……」
そこで詩遠は僕から目線をはずし、なぜか少し頬を染めてつぶやいた。
「誠一、私が練習でどんなに遅くなっても必ず待ってるんだもん……」
え? 僕? 夜遅くなるし、女の子の夜道の一人歩きは危険だから僕にしては珍しく気を配ってたんだけど……、何かまずかったのかな?
「僕が待ってるとイヤだった?」
「イヤじゃなくて、むしろすごい嬉しかったけど、イヤだった……」
「はい?」
「誠一、何するでもなく本当にただ待ってるだけですごい申し訳なかったし……、後輩の間で誠一かっこいいとか彼氏だとか色々噂されたりしたし……ああもう! 何でもない!」
「???」
それ以上は詩遠は黙して語ろうとしなかった。
うーん、いまいちよくわからなかったなぁ。
まあ、詩遠がそれでいいならいいか。