第22話:後悔役に立たず
「…………(イライライラ)」
僕は、もしかしたら虎の尾を踏んでしまったのかもしれない。
僕の部屋で、詩遠のイライラは最高潮に達しようとしていた。
失敗したのは、いつだったんだろう?
僕が下校中にゲームショップに立ち寄ったとき?
それともゲームショップで安くて面白そうなゲームを見つけたとき?
そのゲームが対戦型パズルゲームだったとき?
ゲームをレジに持っていったとき?
夕方、詩遠に買ってきたゲームで遊んでみようと誘ったとき?
それとも……、僕が5連勝あたりでだんだん詩遠の目が据わり始めたのに気がつかなかったとき?
後悔先に立たずというけれど、今の僕が正にそれ。
後悔は後になって悔やむから後悔って言うんだね〜……ちょっと涙でそうになった。
既に時刻は午後11時。始めたのが大体午後8時ごろだったから……うあ、もう3時間もやってるんだ、そりゃあ指も疲れるわけだ。
でも、詩遠は疲れなどまるで無いかのように再プレイを選択。
前に見たのと同じくらいの黒いオーラが! 人間には出せないようなオーラが出てるから!
そして僕が再対決を拒否できるわけも無く……、あ、これで僕の100連勝か。
しょうがないんだよ、手加減したらすぐにばれそうだし。ばれたときが怖いので全力を出すしかないんです。
黒いオーラは増大中だけど、流石にそろそろ切り上げないとまずいよね、明日も学校あるし。
「…………(イライライライラ)」
「……あの、詩遠さん?」
「なに」
「その、そろそろいい時間だし、この辺でお開きにしない?」
「や」
一文字で否定されてしまった。
「そんなこと言わずにさ、さすがに僕も疲れちゃったしさ」
「むぅ〜、勝ち逃げだ、誠一ずるい」
いや勝ち逃げって……、勝って逃げれるならぜひそうさせて欲しいんだけどね。
「もう一回だけ、もう一回だけしたら帰るから」
「じゃあ、後一回だけだよ?」
「うん!」
…………これで101連勝、かあぁ。
「むぅ〜〜〜〜〜〜〜……、も、もう一回だけ!」
「さっき約束したでしょ、明日にしよう、ね?」
「わかった……、また明日だからね! 覚えてなさいよ!」
その捨て台詞を残して詩遠は自分の部屋に帰っていった。
まさか詩遠から3流悪役のセリフが聞けるとは……。これだけでこのゲーム買った価値はあったかもしれない。
――――――次の日。
YOU WINの文字が僕の方の画面に表示される。
これで、150連勝かぁ……、なんで勝っちゃうんだろう? 少なからず運の要素もあるはずなのに……。
「もう一回! ほら早くコントローラー握って!」
しばらくはゲーム漬けかなあ……はぁ。