第21話:幸せだと嬉しいな
詩遠視点です
「それで、3日目のお昼にお母さんたちが帰ってきてそれじゃあってことで誠一は自分の部屋に帰っていったんだけど……、どうしたの? ありえないこと聞いたような顔をしてるけど」
「ありえないこと聞いたからそういう顔になってるのよ!!」
連休が明けた翌日、私は教室で友人と雑談をしていた。
連休中何をして過ごしていたかを聞かれ正直に答えると……大きな声で叫ばれてしまった。
教室内の目が一斉にこっちを向くので、私と友人で適当にごまかして話を戻した。
「一体何なのよあなたたちは、どこのバカップルだって感じなんですけど」
「そ、そんなカップルだなんて……それはいつかはそうなれたらいいなって思ってるけど、今はその……まだ……」
やだ、カップルなんて言われると結構恥ずかしい……、でも結構嬉しいかも。思わずもじもじしてしまう。
「くあーーーー! はじらう朝倉が卑怯なくらいかわいいーーーー! ……じゃなくって! 私が聞きたいのはそんな状況なのになんで恋人じゃないのかってこと!」
かわいいとか、そんな恥ずかしいことを大声で言わないでいただきたい。
「それは、私たちはまだお互いの気持ちを確かめ合ったわけじゃないし、誠一ってそういうことに関しては無頓着だし……」
誠一はそういう話題は一切しない。
わざとなのか天然なのか……100%天然だ、間違いなく。
「しかし、添い寝しても襲わないなんて……、渡瀬ってもしかしてホモなんじゃないの?」
「それはないよ、何度か無断で部屋を探したけどそっち系の本は出てこなかったもの」
ええ、それはもう隅から隅まで念入りに探しましたとも。
「朝倉……それは犯罪じゃ……?」
「……」
「目を逸らすな! ……ったく」
ちょ、ちょっと魔がさして……。今度謝っておこう、誠一ならきっと謝れば許してくれる……と思う。
「……でもさ、あんたたちの関係ってある意味羨ましいかもね」
「なんで?」
「そうねえ……お互いを信頼しているというか、あんたたち二人が一緒にいると二人とも幸せそうないい顔するのよ」
「幸せそう……、誠一も?」
「もちろん、すっごい幸せそうよ」
誠一が私といることに幸せを感じているとしたら……。
「そうなら、すごく嬉しい……かな」
「くあーーーー!! その照れ笑顔はかわいすぎ! 反則!!」
だから、そういうことを大声で言わないで欲しいんだけどなぁ。