第20話:夢の生活? そのご
前半は誠一視点、後半は詩遠視点です
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした。誠一、こっちにお皿ちょうだい。一緒に運んじゃうから」
「はーい」
きれいに食べきって空になった皿を詩遠に渡して、僕はうーんと伸びをした。
今日は一日家事に追われっぱなしだったなあ。詩遠だいぶ眠かったみたいで公園でだいぶ寝てたし。
掃除してご飯の支度して洗濯……は詩遠が『洗濯物に絶対近づいちゃ駄目!』って言うから任せたけど。二人でやった方が早く終わると思ったんだけどなあ。
台所で皿洗いをしている詩遠を見る。あまり慣れてないのか少しぎこちなく皿を洗うエプロン姿が初々しくて、新婚の若奥様って感じだ。
詩遠に言ったら『私はまだそんな年じゃない』って怒られそうだけど。
さて、これからどうしようかな?
詩遠と一緒にテレビでも見ようかな?
あ、何か映画でも借りてくればよかった。せっかく明日も休みなんだし親の目もないし、お隣にはいるけど。
でも映画借りると詩遠はすぐホラーなの借りようとするからなあ、僕がそれ系だめなの知ってるくせに無理やり見せようとするし。
危なかった、提案しなくて正解だったね。
「誠一、皿洗い終わったよ」
「お疲れ様〜」
エプロンを脱いで若奥様モードを解除した詩遠がソファーに座る僕に歩み寄る。
「そういえば誠一はもう宿題終わらせてるの?」
ぴし。
「……宿題ってどこの国の言葉だっけ?」
「あーはいはいやってないのね。もうしょうがないなあ、私もまだだから一緒に宿題しよう? 確か現国は誠一が当てられる番だったからやっとかないとまずいでしょ」
そうだったっけ? 当てられる本人の僕ですら覚えてないのによく覚えてたね。
「うう……、よろしくお願いします」
「ほら、そうと決まったら自分の部屋から勉強道具持ってきて。私の部屋でするから」
「はーい……」
「ぶはー!終わったーーー!」
最後の問題を解き終わると、誠一はばったりと倒れこんだ。誠一、そこ私のベッドなんだけど。
「お疲れ様、前より分かるようになってたじゃない」
「いやあ、詩遠先生のご指導の賜物ですよ」
「わかってるならよろしい。私お茶淹れてくるね」
「いってらっしゃい〜」
寝転がったままひらひらと手を振る誠一。頭を使うとすぐぐったりするのは昔から変わらない。
私は誠一に対して恥ずかしがったりせずに自然に接することが出来ていた。
お母さんやお父さんがいらないこと言うから私も変になってたけど、自然体な誠一を見ているとそれもなんだか馬鹿らしくなってしまった。
慌てることはない、なるようになるさ……って誠一の考え方がうつったのかな?
一階に下りて紅茶を淹れる。私も誠一も甘党だから砂糖は多めに持っていく。
「誠一〜、お茶淹れて来たよ〜……、誠一、寝てるの?」
私が戻ると、誠一は私のベッドですやすやと寝息を立てていた。
もう、人がせっかくお茶持ってきてあげたのに。
仕方ない、この紅茶は冷蔵庫に放り込んで、明日の朝飲むとしよう。
私ももう寝ようっと、お昼寝したから正直あまり眠くないけど。
そこまで考えて、私ははっと思い当たった。
私の部屋のベッドは誠一に占領されている、では私はどこで寝ればいいのか。
私の目は自室のベッドに向かう、誠一の隣は人一人分くらいのスペースなら十分に空いていそう。
な、なに考えてるの私! 男の人の寝ているベッドにもぐりこむなんて、はしたない!
でも……、きっとすごく気持ちよく眠れるだろうなあ。
私の頭の中の悪魔と天使がささやいた。
悪魔詩遠『元々自分のベッドだろう? 何を迷う必要があるんだよ、迷わずGOだろうここは』
天使詩遠『そうですね、それに誠一ならもぐりこんでも気まずくなったりということは無いでしょうからね』
ちょっと! 天使としては『いえここは下で寝ましょう』とか言わなくていいの!?
天使詩遠『いいんです、なぜなら天使は愛とか恋を推奨しますから』
あ、そうなんだ……。
寝ているとはいえ、さすがに恥ずかしいので洗面所でパジャマに着替え、私はそっと誠一の隣に寝転がった。
誠一の息遣いや、匂いや、体温がすぐ近くで感じられる。
どきどきしてるけど……、それ以上に私は安心するのを感じていた。
今日はいい夢が見られそう。
私は昼間たっぷり寝ていたにもかかわらず、すぐに眠りに落ちていった。