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第2話:頼みごと

「なあ、お前らって付き合ってるの?」


授業の間の休み時間に男友達がそんなことを聞いてきた。


「お前らって誰のこと?」


「だから、お前と朝倉さんのことだよ!」


心なしかイライラした口調で言われてしまった。明言してなかったじゃんよ、だからって言われてもわかんないって。僕はエスパーじゃないっつーの。


しかし、僕と詩遠が付き合っているか? 僕たちはお隣さんだからご近所付き合いくらいはあるけど彼が言いたいのはそういうことじゃないだろう、いくら僕だって一応高校生だし、それくらいは解る。


第一こういった質問って実は初めてじゃない。小学生の頃から同じ質問を色んな奴に何回もされている。それはもううんざりするくらい。


「別に付き合ってるわけじゃないよ」


こう答えるのもう何度目だっけ? 2桁になるくらいまでは覚えてたんだけど途中からめんどくさくなって数えるのを止めた。


「じゃあさ、俺と朝倉さんがうまくいくように協力してくれよ、なあ頼むよ、俺達友達だろう?」


今回はこのパターンか、まあ一方的にライバル宣言されるよりはましかな。何でああいう人たちって人の話を聞いてくれないんだろう。中学の時は集団で襲いかかってきて命の危険が隣り合わせだったもんだ。まあ、詩遠が『誠一に手を出したら生まれてきたことを後悔させてやる』と全校生徒に校内放送で宣言したおかげでその後はぱったりと止んだけど。あの時は担任に後でめちゃくちゃ怒られたっけ。実行犯は詩遠であって僕は間接的にしか関係ないんだけどなあ。


「無理」


「なんでだよ、いいだろ? お前彼氏でも何でもないんだろ手を貸してくれよ」


あ〜めんどくさい。僕が協力してやらない理由をこんこんと2時間かけて教えてやりたくなったけどそんな労力割くのも馬鹿らしい。


「気が乗らないから」


「なんだよそれ、心の狭い奴だな」


何とでも言うがいい、事実その通りなんだから。僕はこの話に関しては自分でも信じられないくらい心が狭いんだ。


小学生の頃、今のようにそのとき仲の良かった友達に頼まれて、詩遠に紹介したらなぜか詩遠はぶち切れてその場で友達共々ぼこぼこにされ、一週間にわたる陰湿ないじめ攻撃を受けた上でもう詩遠に男は紹介しませんと血判状を作らされた。はっきりいってトラウマもんだった。二度とあんな目には遭いたくない。ちなみにそのときの友人とはそれっきり、たまに見かけてもすごい勢いで目をそらされるようになった。


あの地獄をうけるくらいなら僕はいくらでも心を狭くするね。














「って話をさっきしていたんだ」


「また? もう、いい加減にして欲しいよ」


「いや、まったく」


時間は進んで昼休み、僕は詩遠と一緒に教室で弁当をつついていた。ちなみに弁当は両方とも僕のお手製だ。中学生の時、詩遠に僕の弁当が食べたいと駄々をこねられて以来詩遠の弁当は学校がある日は毎日欠かさず僕が作っている。料理がうまくて面倒見が良くてまめな自分がちょっと好き。でも僕はナルシストじゃない、そこんとこ間違えないように。


同じ教室には僕らと同じように弁当をつついている奴、机に突っ伏して寝ている奴、仲良く弁当を食べている僕らを恨めしそうに眺めている奴ら多数、教室の外には中をちらちらと伺っている奴もいる。


解らないのは眺めている奴や外から伺っている奴の1/3位は女子生徒だということだ。


恐るべし朝倉詩遠、男だけでなく女まで魅了しようとは……。僕は暗い夜道で後ろから刺されないようにお星様に祈るばかりです。


「ねえ、もし、さ」


「ん?」


「もし、もしもだよ、あり得ないけど私が彼氏を作ったら、どう思う?」


「どうって……」


詩遠が彼氏をつくる?


ということはあれか?詩遠が放課後にデートしたり、彼氏のために甲斐甲斐しく弁当を作ってみたりするわけか……。


……


…………


………………


あ、ありえねぇ! そんな詩遠想像もつかないよ! 詩遠の脳を改造でもしない限りまず無理。


「ねえ、なんだかとても失礼なこと想像してない?」


「いえまったくそんなことはありませんヨ」


危ない危ない、こういう時詩遠は勘がいいから気を付けないと。


よし、視点を変えよう。


詩遠が彼氏を作ることによって僕の生活がどんな風に変わるか?


朝弁当を作る僕、むろん自分一人分だけ。もしかしたら自分の分だけならめんどくさくなって学食に切り替えるかも。あ、ちょっとこれは楽かもしれない。


登下校だって一人だけ、同じ方向から通学する人って友達にいないし。


そして僕らは二度と互いの部屋を行き来しなくなるだろう。彼氏でない男が部屋に入り浸ったり逆に入り浸ったりするのは彼氏に対して誠実でない、てか僕がそんな不誠実な真似は我慢ならん。詩遠がいない僕の部屋を想像するとなんだか物足りなくて寂しい感じがした。


「大分へこむ、かな」


少なくとも一年は寂しくてへこんだまま、もしかすると一生そのままかも。やだなーへこむなーきびしー、想像したくねー。


「そ、そう?」


「滅茶苦茶辛いかも」


「……脈がないわけじゃないんだ」


「ん、なんか言った?」


「何でもない! ほら、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ」


ごまかされたような気がしたけど弁当を残すのは僕の美学に反する。急いで弁当をかっこんだ。



















後日談。


あれから友人は告白したらしいがにべもなく断られたらしい。


ショックで寝込んだ彼は一週間学校に来なくて次にあったとき彼はなぜか坊主になっていた。


詩遠、いったいどんな断り方したんだ?怖くて聞けない……。

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