第18話:夢の生活? そのさん
(※)詩遠視点です
「はぁ……」
ちゅんちゅんとスズメの鳴く声が明るくなった窓から聞こえてきて、私は思わずため息をついた。
現在、朝の5時。
「眠れなかった……」
カレーの具の分け合いっこをして和んだのが10時間前。
誠一の入ったお風呂に入るか、誠一に自分の入ったお風呂に入らせるかで悩んだのが9時間前。
客間に布団を敷いた誠一におやすみの挨拶をしたのが7時間前。
悩んだ結果、部屋の鍵は閉めずに、……万が一のときのためとお気に入りの下着に着替えたのが6時間30分前。
それから布団に入って……一睡も出来ないまま今に至る。
「ああ〜〜〜、私のばか〜〜!」
少し考えればわかることじゃないか。
普段から誠一は私を襲おうと思えばいつでも襲える状況にいる、二人きりでいるからって急に態度を変えたりするはずがないじゃない。
過去の自分の頭を殴って怒鳴りつけてやりたい、特に6時間30分前の自分。
お母さんのメールに動揺して右往左往して、あれですか、私は哀れなピエロですか?
しくしくしく……。
……
…………
「……起きよう」
流石に、まだ誠一は起き出してはいなかった。
私は眠気覚ましに棚からインスタントコーヒーを取り出した。
もちろんミルクと砂糖は手放せない。
「はあ……なにやってるんだろうなぁ、私」
朝からため息が多いとは思うけど、自分では止められそうにない。
「ん〜……、コーヒーの匂いがする……」
私がちびちびコーヒーをすすっていると、誠一が居間に姿を現した。
「起こしちゃった?」
「十分寝たから平気〜……いつもこのくらいの時間に目が覚めるしね」
誠一はいまだ塞がったままの目を擦って、顔を洗ってくると言い残して居間から出て行った。
次の瞬間、廊下の方からガン! と何かがぶつかる音が聞こえた。
慌てて様子を見に行くと、誠一が半開きになったドアの前で顔をさえてうずくまっていた。
「どうしたの!?」
「ど……」
「ど?」
「ドア開くときに顔ぶつけた〜……。いたた、眠気が吹っ飛んだよ……」
それは、自分で開いたドアに自分からぶつかりに行ったってこと? ま、まぬけ……。そういえば誠一って寝ぼけるタイプだったっけ。
「……ぷ、くくく」
「わ、笑わないでよ」
「ご、ごめ、ぷ、くっく、ごめん……、ぷ」
私の笑いは、誠一が顔を洗い終えて憮然とした表情で出てくるまで続いた。
そのよんへ続きます