第17話:夢の生活? そのに
「詩遠〜、ご飯出来たよ〜」
僕は完成した料理を皿に盛り付けてテーブルに運んだ。
ん? 詩遠の動きがぎこちないような……気のせいかな?
……ああ、ご飯が待ちきれないのか。
もう、しょうがないなあ詩遠ったら。
「今日の夕飯はカレーライスです。というか冷蔵庫の中を吟味した結果カレー以外の選択肢はありませんでした」
「そ、そうなんだ……」
たぶん明日にでも買出しに行く予定だったんだろう、冷蔵庫の中は調味料とかを除くとほぼ空っぽになっていた。
パンは戸棚にあるのを確認しているので明日の昼の分から考えないとなあ。
「それでは、いただきま〜す」
「いただきます……」
ん〜、やっぱり元気ないなあ。
機嫌悪い? でも理由がわからない……はっ!
まさか帰ってきたときの『ご飯にする? お風呂にする? それとも……』が原因!?
詩遠なら突っ込みを入れてくれると思ったけどほぼ無反応だったしなぁ。
うーん、白けさせちゃったか、失敗失敗。
ということはこっちをちらちら伺っているのはお説教のタイミングをうかがってる!?
まずい……なんとか機嫌を直してもらわないと。
「ほ、ほら詩遠食べて食べて! これけっこううまく出来たんだよ!」
「う、うん……」
何かないか何かないか……あ、思いついた。
「詩遠、これあげるね」
僕は自分の皿からジャガイモを箸でつまむと、詩遠の皿にひょいひょいと乗っけた。
「あ……、誠一覚えてたんだ……」
「詩遠は煮込んだジャガイモのほくほくした感じが好きなんだよね〜」
「そういえばこのカレーもちょっと甘めで、丁度いい塩梅だよね」
「詩遠の好みくらいは把握してるよ、何年来の付き合いだと思ってるのさ」
「そっか……えへへ」
あ、笑顔になった。
よかった機嫌が直ったみたいで。
これでお説教は回避できたかな?
「じゃあ、私からもお返し」
そう言って詩遠は自分のカレーからニンジンを僕の皿に移した。
あ、詩遠も覚えてたんだ。
僕がカレーの辛いのとニンジンの甘いのの組み合わせが好きだってこと。
「よく覚えてたね」
「何年来の付き合いだと思ってるのよ、誠一の好みくらいは把握してるわよ」
「それもそっか」
詩遠にそういわれるのはなんだかちょっとむず痒くて嬉しいかも。
思わず笑顔になってしまう。
その後も僕らはずっと笑顔で、ジャガイモだらけのカレーとニンジンだらけのカレーを食べ尽くした。
そのさんへ続きます