第16話:夢の生活? そのいち
(※)詩遠視点です
「〜〜♪」
学校からの帰り道、明日から3連休ということで私はとても上機嫌だった。
明日から何しようかな?
いつも通りなら誠一の部屋に入り浸るんだけどそれも芸がないというか普通すぎるというか、もっと面白いイベントはないかな?
う〜ん、ショッピングにでも誘ってみようかな、そろそろ夏物を見繕っておかないとね。
それに誠一の分も見てあげないと、私が見てあげないと一年中おんなじもの着てそうだし。
本当に自分には無頓着というか、興味のあることにしか頭が回らないというか。
そんな誠一をお世話するのも楽しいからいいだけどね。
頭の中で休日の予定を立てながら、私は自分の家の玄関を開けた。
この時間ならまだお母さんが夕ご飯を作っているはずだから、料理の練習がてら手伝ってあげようかな?
「ただいま〜」
「あ、おかえり〜詩遠」
しかし、台所から出てきたのはお母さんではなく、なぜかピンクのエプロンを着込んでおたまを右手に持った誠一だった。
「……」
「どうしたの? 早くあがりなよ」
「……」
「どうしたんだろう? ……あ!」
誠一は何か思いついたのか、とことこと玄関先まで出てきた。
「お帰りなさい、あ・な・た。 ご飯にする? お風呂にする? それとも……僕にする?」
#%※$〇〒〜〜〜〜〜〜〜っ!!!(声にならない心の叫び)
「誠一ひとつお願いしましゅ」
「は?」
「い、いや! 何でもない何でもない!」
いけないいけない、あまりの精神ダメージの大きさに思わず我を見失ってしまった。
一体全体これはどういうこと? これは夢なの? それともドッキリ? カメラはどこ!? 夢ならば覚めて! いや永遠に覚めないで!
「う〜ん、違ったみたいだね」
「い、いったいこれはどういうこと!」
「あれ、もしかしておじさんとおばさんから何も聞いてない? ……んー、まあとりあえずあがったあがった」
「う、うん……」
私は未だ錯乱中の頭を抱えて、誠一に引っ張られて家の中へ入った。
「出張? お父さんとお母さんが?」
「うん、急に決まったらしくって3日家を空けるんだって。
その間詩遠一人になるから、女の子一人じゃ危険だろうっていうことで僕が呼ばれたってわけ」
誠一の説明は以上で終わりだった。
ちなみにさっきの「ご飯に〜」は誠一の冗談らしい。
急な仕事じゃあ仕方ないのかもしれないけど、一つ屋根の下に若い健康的な男女が二人っきりって状況に何か危機感を覚えなかったのだろうか私の両親は。
確かに普段から誠一も私もお互いの部屋を行き来してるからそんなに変わらないといえばそうだけど、それとこれとではやっぱり違うわけで。
私的には、まあ、その、やぶさかではないというかなんと言うか……ああもう、恥ずかしい!
そんな事を考えていると、私の携帯にメールが届いた。
確認してみるとお母さんからだった。
『 詩遠ちゃんへ
ごめんね、急なことだったから連絡するのが遅れました。
今新幹線を待っているところです。
仕事で私たちは3日ほど家に帰れません。
誠一君に家のことを頼んできたのでそのあたりはあまり心配してないけど
火の元には注意してね。
夜は戸締りをきちんとね。
ちゃんとご飯は食べるんですよ。
誠一君に迷惑かけないようにね。
お母さんより 』
お母さんったら心配性なんだから、もう。
それより誠一の方が私より微妙に信頼されているのはなぜ?
……あ、メールに続きがある。
『 追伸
お母さん初孫は男の子がいいな♪
メール送ってくれたらもう2,3日帰るのを遅らせますからね(はぁと) 』
確信犯かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
危うく勢いで携帯電話を床に叩きつけるところだった。
まったく、お母さんったら……。
あ、今度はお父さんからメールが来た。
『 お父さんは女の子がいい 』
お父さん、あなたもかいっ!
私は感情のままに携帯電話をソファーに投げつけた。
「詩遠、なにがあったか知らないけどもうすぐ夕飯だからあまり埃たてないでね〜」
「は〜い……」
誠一にたしなめられてしまった。
確かに面白いイベントないかなって思ったけど……。
なんなの、この急展開は!
…………どうしよう?
そのにへ続きます