第15話:約束のバケツ
「よーし着いた。ここだよ詩遠、ここに詩遠を連れて来たかったんだ」
「ここって……、喫茶店?」
店長さんとの約束の日、僕は詩遠を連れて須藤のバイトする喫茶店までやってきていた。
「あれ、でも入り口に本日定休日って書いてあるよ?」
「ん? ああ、いいからいいから♪」
試食なので定休日にやってくるよう言われているので全く問題はない。
「いらっしゃい、お待ちしていました」
「いらっしゃいませ〜」
店に入ると店長さんと須藤が出迎えてくれた。
須藤……やっぱりウェイトレス姿なのね。
「え、え、一体どういうこと?」
「まあまあ、とりあえず座って座って」
未だ頭に? が浮いている詩遠を多少強引に座らせて僕も対面の席に着くと、すぐに目的のものが店長と須藤の二人がかりで運ばれてきた。
「お待たせしました。これが試作品の『ロイヤルスイーツパフェ・LLサイズ』になります」
でん!と僕らのテーブルに置かれたのは一抱えほどもある器にたっぷりと盛られた果物とアイスと生クリームの山々、正に壮観である。
よくこんなもの作ろうと思ったなーと思わず感心してしまった。
「せ、誠一!? これは……?」
「前に言ってたでしょ、バケツいっぱいのパフェが食べたいって。だから、この前の遊園地の代わりに、ね」
「誠一……ありがとう、とっても嬉しい!」
そう言って貰えるとこっちとしても本望です。
いやー、須藤に相談したかいがあったというものですよ。
その須藤もこっちを見てニコニコしてる。
そういえばあれが須藤だって詩遠は気がついていないみたいだけど……まあいいや、ほっとこ。
「それでは、たんと召し上がれ」
「うん! いただきま〜す!」
「ご馳走様でした……、もう無理、入らないよぅ」
30分後、1/3を平らげたところで詩遠はまだまだ残ってるパフェの山に白旗を上げた。
そうだよねえ、詩遠あんまり食べる方じゃないもんねえ。
この結果は予想してしかるべきだったなあ。
「それじゃあ、残りは僕が食べちゃうね」
「うん……」
僕は詩遠の使っていたスプーンを手に取り、パフェを食べ始めた。
「あ……間接……」
「ん、どうかした詩遠?」
「な、なんでもないよ!」
詩遠は何か言いたげだったけど、結局何も言わずに黙ってしまった。
なんだろう?言いたいことは言った方がいいよ、
別に大抵の事じゃ怒ったりしないし。
そういえば最近怒ってないなあ、いや別に怒りたいわけじゃないんだけど、それだけ平和ってことかな?
あ、生クリーム水っぽくなくておいしー。
ぱくぱくぱくぱく。
「ごちそーさまー」
「早! まだ食べ始めて15分くらいしか……」
「ほら、甘いもの別腹って言うじゃない」
「なんか違う気がする……」
空っぽになった器を見て、詩遠は信じられないようなものを見る目をしていた。
僕が食べ終わるのを確認すると、店長さんがニコニコしながら近づいてきた。
「店長さん、ご馳走様でした。とってもおいしかったです」
「ははは、それは何よりです。実は試作品がもうひとつあるんだけど食べてみるかい?」
「あ、いただきます」
パクパク、んー、おいし♪
「おかしい、おかしいよ誠一……、誠一の体積超えてるって……」
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