第14話:帰り道で
「あれ、あそこにいるの誠一、だよね」
放課後、帰り道を一人で帰っていて川沿いの土手に差し掛かったところで、私は川の手前で寝転がってるお隣さんを発見した。
何してるんだろう? 釣り? でも釣竿は見当たらないし、でも誠一なら釣竿なしで釣りしてても不思議じゃないよね。
イメージの釣竿でイメージ釣り……結構やってても違和感ないかも。
とにかく私は近づいて声を掛けることにした。
小学生のころは土手を遊び場にして遊んでたりしたけど年を重ねるにつれてあまり近寄らなくなった。
普段は気にも留めないけど改めて考えるとちょっとさびしい。
「誠一、何してるの?」
「……あれ、詩遠。どうしてここに?」
「誠一を見かけたからあっちから降りてきたの。それで、何してるのこんなところで?」
「ああ、何もしてないんだよ」
「?」
誠一の言ってることがいまいち理解できない。何かをするためにここで寝っ転がってるんじゃないの?
「うーん、なんと言うか、何もしないということをしているというか……」
「……つまり、ぼーっとしてるの?」
「まあ、平たく言えばそんな感じ」
それならわかる。誠一はよくぼーっとしてるから。
「何を眺めるでもなしに、何も考えるでもなしに、ただじっとしてるのがいいんだ」
「それ、前にも聞いたよ」
「そうだっけ?」
前に来たときは気にも留めなかったけどね。
「私も一緒にいていい?」
「いいよー、ご自由にどうぞー」
私は誠一の隣に寝転がった。
「……」
「……」
何を話すだけでもなく、ただ『ぼーっ』としている。
ああ、風が気持ちいい……。夕焼けがきれい……。
そういえば最近はちょっと忙しくってこんな風にただ寝転がるなんてしなかったなあ。
平和だなあ……。
…………
……
「…………ん、……おん、……詩遠」
「ん……」
うっすらと目を開けると、あたりはもう暗くなっていた。
どうやらうっかり寝てしまったらしい。
「ほら、そろそろ帰ろうか」
「わかった……。ん、んんー!」
思いっきり伸びをすると、なんだかだいぶすっきりした気がした。知らず知らず疲れがたまっていたのかな?
「すっかり遅くなっちゃったねぇ」
「そうだねー。……ね、誠一」
「何?」
「またぼーっとするときは、誘ってね」
「……了解」
夜の帰り道で、私たちは笑いあった。