表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/58

第12話:課題

「じい〜……」


「……ん? 詩遠、どうかしたの?」


「う、ううん。別に何も」


「そう? ならいいけど」


「…………じい〜……」


詩遠、何もないなら睨まないで欲しいなあとは思うけど口には出さない。

こういうときの詩遠は気が済むまで好きにさせておいた方がいいと経験で知っている。

というか止めさせてもなんだかんだで丸め込まれて結局詩遠の行動は止められないので言うだけ無駄なのだ。

しかし、僕を観察してどうするんだろう?

絵のモデルとか?美術の課題ってあったっけ?

んー……、ああ、確かにあったな、確か身近なものを描いてこい、だっけ。

なるほど、それで詩遠は僕を描こうと観察してるわけか。

そういえば提出期限週末までだっけ。

うわー、まだ手をつけてなかった。

思い出してよかったヨカッタ。

僕もさっさとやらないとね。


僕は棚に放り込んであったスケッチブックを取り出して、白紙のページを開いた。


さて、何を描こう……というか、目の前に丁度いいのがいるじゃん。


「誠一、何してるの?」


「ああ、詩遠を描こうと思って」


「ええっ!!?」


いや、そこは驚くところじゃないでしょ、詩遠だって僕を描こうとしてるんだから。

詩遠はぶつぶつと「ヌード……芸術のため……我慢できなく……襲われたり」と、何かつぶやいてるみたいだけど相変わらず声が小さくてよく聞こえないや。

この状態になると長いんだよなあ詩遠。

まあいいや、今のうちに描いちゃえ。







「……はっ!」


「あ、お帰り〜詩遠」


僕が描き終えてしばらくたった頃、ようやく詩遠が戻ってきた。

最近よくフリーズするけど大丈夫かな?


「ほら、もう出来てるよ、詩遠の絵」


「え、見せて見せて。……相変わらず誠一ってこういうのうまいよね」


「そう? 素人に毛が生えた程度だと思うけど。はぁ〜、これで課題も終わったし、後は明日提出するだけだよ」


「……え? これってもしかして、美術の課題?」


「そうだけど?」


何をいまさら。


「だ、ダメ! 私の絵を提出するなんて、絶対ダメ!」


「えー、でも新しく描くのめんどくさい」


「とにかく、これはダメったらダメ!」


「あ、詩遠!?」


なんと詩遠は僕のスケッチブックを持ったまま逃走し、自分の部屋に持ち帰ってしまった。


「……ええー」


なんで?










次の日、朝一で新しいスケッチブックを買って、適当なものを描いてなんとか提出は間に合わせることが出来た。


詩遠……、せめてスケッチブック本体は置いて行って欲しかったよ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ