短編小説 決意
私の知り合いには、国際数学警察に所属している志熊警部という男がいる。
戦時中、志熊警部は秘密警察に所属していたと聞いたことがあった。
彼がこの島に移住してきた理由とは・・・・・・ 。
「いいか、このフロッピーディスクは理論上は、100年も保存可能らしい」
「誰が、100年も保存可能と調べたのか? 」
志熊警部と大熊は言い争いをしていた。
「ならば、このレーザーディスクはどうだ? 」
分かるなら答えてみろ、という偉そうな態度で志熊警部は聞いた。
「LDは、永久に保存可能らしいぞ! 」
「ブッププ!レーザーディスクは、永久には保存可能ではないらしいぞ! 」
私は気になったので、何を争っているのか、志熊警部たちに聞いた。
「シグマ警部が、役場のデータ管理をすべてLDにしろと言うのだ! 」
レーザーディスクとフロッピーディスクは互いに保存する媒体である。
だだし、両者の難点といえば、サイズが大きいことであった。
「フロッピーディスクならば、値段が安いらしいですし、小さいサイズのフロッピーディスクもありますよ」
私は、大熊に加勢するような言葉を言った。
「優秀な部下をだな! 」
志熊警部は悔しそうに、捨てゼリフ言って去った。
「どうして、志熊警部はあのようにワガママなのですか? 」
「さあな、彼は国際数学警察と同様に、謎が多いからな・・・・・・ 」
大熊は、困ったようにため息をついたのであった。
「国際数学警察とは、どんな集団なのですか? 」
「日本の警察とは違い、自警団という独自に我が身を守る集団かな。最近では、特殊訓練といって武装化するとか・・・・・・ 」
「私も特殊訓練をしている部隊を見たことがありますよ。確かF0特殊攻撃隊と言っていましたね」
「ああ、F0特殊攻撃隊。まるで、戦時中の特攻隊のような響きだ」
大熊は、恐ろしい顔をしていた。
戦時中、この島にも特攻隊が出撃したと図書館の本で見たことがあった。
「そのF0特殊攻撃隊は違法ではないのですか? 」
「この島は、日本の領土に所属しているが、国際的な研究所が多いから法律が適用されない場合もあるのだ」
大熊は、この島に適用することが法律の一覧を見せてくれた。
そして、驚くことに日本の法律の全てが適応できない状態であった。
「こんなこと間違っているではありませんか! 」
私は、怒りという感情を抑えながら、大熊に聞いた。
「私も思う・・・・・・ 。しかし、他国の様々な思惑、博士の一党独裁で、私も政府もどうすることもできんのだ! 」
大熊は、悔しそうにそう言い、新たにリストを見せてくれた。
そこには、この島でどんな犯罪行為が行われているか、詳細に記録されていた。
----リスト----
徳川製薬(日本)・・・・・・麻薬の栽培と売買行為
移民島(日本所属)・・・・・・博士を中心とする派閥の一党独裁
ユタカーン(ライス王国)・・・・・・核兵器の持ち込みと研究
アカベニ(スバ国)・・・・・・サイバー攻撃とフェイクニュース
カモンス(アイダ国)・・・・・・化学兵器開発と実験
以下省略
----リスト 終わり----
リストを見終えた、私は恐ろしくなった。
「この島でこんな犯罪行為が・・・・・・ 」
「全島民で調べたし、国際数学警察の輩にも協力してまとめたものだ」
「私が、この島に移住する前の話ですね」
「そうだ。もちろん日本の警察にも報告したが、政治が絡んでいるようで、簡単には動けないと言っていたよ」
「さて、そんな暗い話をしていても、明るい未来がないから仕事のように一つずつ片付ける必要があるな」
「そうですね」
「まずは、国際数学警察を確実に味方につけるために、どんなことをしているか調査することにしよう」
私たちは、国際数学警察の本部へ向かった。
国際数学警察の本部といえば、立派にきこえるかもしれない。
しかし、廃校となった学校を再利用しているため、古びていた。
正門には、マルタ警部が、あんパンを美味しそうに食べながら、警備をしていた
「どうも、大熊さん。何かご用ですか? 」
「ああ、こいつが移住してから、ここへ案内していなかったからな」
「そうですか。ならば、私が案内しましょう」
マルタ警部は、残ったあんパンを一口で食べ終え、私たちを案内してくれた。
そして、問題のF0特殊攻撃隊の練習風景を見せてもらった。
「いいですか、このCQCはですね・・・・・・ 」
マルタ警部が、得意げに説明しようとしたら・・・・・・ 。
「おしゃべりは感心しませんな。マルタ警部」
私たちは、後ろを振り向くと、志熊警部が立っていた。
マルタ警部は、マズイ、という顔をしながら早々に去って行った。
「さて、見学は済みましたかな? 」
「こいつが、移住してからそんなにたっていませんから、島の案内が必要と思いましてね・・・・・・ 」
「そうですか。それとも、探偵ごっこですかな? 」
「まさか、ネコバー先生の書いた小説なわけでないですし・・・・・・ 」
私は、大熊を助ける言葉を言った。
「そうだよな。敵をつくる行為は、少数派の派閥にとって不利ですもんな」
どんな理由で、私たちが来たのか志熊警部は、知っているような口ぶりであった。
「この島に敵なんていますか? 」
「さあな。敵の有無は、我々が決めることではない」
「この際、言っておくが法にふれることをすると後々に困るぞ」
大熊は、志熊警部に負けないという気持ちで言った。
「日本の法が、適用されないこの島で何が困るのだ? 」
「困るとも、島民の安全が脅かされるではないか! 」
島の安全を第一優先に守ることであると私は思っていた。
しかし、志熊警部の答えは冷たいものであった。
「島民の安全は二の次だ。今は、武装化が第一優先である! 」
志熊警部の顔は、にこやかに答えた。
そして、部下を呼んで私たちを追い出した。
「志熊警部はいつから、あのようになった? 」
大熊は、ただでは食い下がるまいという思いで、リミット警部とインテグラル警部に聞いた。
「分かりません。我々は、上官の命令に従うのみです・・・・・・ 」
「我々は、ゲームの駒と志熊警部がおっしゃっていましたからね・・・・・・ 」
リミット警部とインテグラル警部は、ルールに縛られているような発言をしつつ、それぞれの思いを述べていた。
「ならば、お前らにとってのルールとは何だ!何が警察だ! 」
大熊は、追い出されるまでに多くの暴言を放ったのは覚えているが、私は内容は覚えていない。
この島の現状が、深刻なものとなっていることを今回の出来事で知った。
同時に、このようにも思った。
法律、派閥、犯罪、政治的問題、歴史・・・・・・ 。
闇が深すぎるから解決できないのではない。
強い思いをもって行動するととで未来は変わる。
私はそのように感じた。
「いくぞ! 」
大熊は、力強くそう言うと役場まで戻った。
終わり