俺の自己紹介と失敗
いや、なんで、えっ!!!
確かに、また、会いたいなー、って思ってたけど、こんな偶然ある?
友達が彼女紹介したいから来て、あっ、向こうからも1人来ることになった。
それが彼女ってある?
いきなりすぎて、心が大津波を起こしているんだけど。
「まぁ、全員揃ったし、座ろうか」
「うん、座ろう!芽衣はこっち」
「あっ、うん」
楓さんに連れられて、彼女は軽く俺に会釈すると椅子に座った。
芽衣っていう名前なのか‥‥‥。
「何、ボーとしてるんだよ。早く座れよ!」
ヒデが俺の肩を叩く。
「お、おう、悪い」
俺もさっきまで座っていた席に座る。
目の前には、彼女が座っている。
あっ、もうだめだ。
何も考えられない。
「えーと、初めて会う人もいるから、自己紹介からしようか」
「いいぜ。それじゃあ、まずは言い出しっぺからな」
「まぁ、いいけど。山倉 翔吾と言います。この2人からはショウと呼ばれています。一応、生徒会長をやって、テニス部の部長。それで、楓の彼氏です。これくらいでいいか?」
「学年1位を忘れるな!!」
ヒデがショウが意図的に隠していたようなことを言った。
「楓、本当?」
「うん、ショウは頭も良くて、凄い人なんだよ」
「楓には不釣り合い」
「ほおっておいて!私だって自覚してるんだから!!」
「そんなことないよ。楓は紛れもなく僕に釣り合った彼女だよ」
「ショウ!!」
「はい、はい。おふたりさん。俺たちもいるんだから、2人だけの世界には入らないで」
「悪いね、ヒデ。じゃあ、次はヒデでいいか」
「いいかの部分に若干の引っ掛かりがあるが、まあ、いい。翔吾の友達の1人の永川 秀樹だ。ヒデと呼ばれている、俺もテニス部に所属している。勉強は察してくれ。まぁ、よろしく」
ヒデも無難にこなした。
ふぅ、次、この流れだと俺だよな。
はあ、どうしよう。
変なことを口走りたくはないけど、だからってまじめに答えて、つまらない奴とも思われたくない。
あー、どうする、俺。
「ケン、お前の番だぞ!!聴こえているか?」
ヒデに真横で言われて、ようやくもう振られていたことに気づいた。
「あっ、はい。大野 謙介、16歳。愛称はケン。テニス部に入っていて、絶賛、彼女募集中の高校生です」
あれ?俺、最後、なんて口走った?
勢いでいこうとしてとんでもないことに口走ってない。
しかも、笑っているならネタで通じるけど、絶対に滑った。
さっきから周りの空気が寒い。
終わった。
つまらない、空気読めない奴だと思われた。
「そ、そういえば、ケンのやつ昨日、電車で、痛って!!!」
少し、正気を取り戻して、ヒデが口走りそうになったことをテーブルの下でヒデの足を踏むことで回避する。
「お、お前、俺はこの空気をどうにかしようとして」
悪い。わかってた。お前はそういうやつだって。
でも、悪い。
本人が目の前にいるんだよ!!!
「電車がどうしたの?」
楓さんが聞いてくる。
やばい、ここはどうにか誤魔化さないと。しかも、一緒にいた人がいるから、嘘はつけない。
だからって本当のこと言ったって、あの、滑った状況からこんな風に告白なんてしたら振られないわけない。
「き、昨日の帰り、寝ちゃって、一駅、乗り過ごしたんだよねっていう話」
「そうなんだ。昨日、テスト最終日で疲れてたからしょうがないね」
よしゃー、誤魔化せた。
これなら嘘じゃないし、大丈夫でしょ。
ようやく、落ち着いて正面を向く。
彼女が無表情で、他の人には気づかれないように小さくジェスチャーでごめんってしていた。
もしかして、昨日、ちゃんと起こしてもらえなかったのを根に持っていると思われちゃってます?
申し訳なく思わせちゃってます?
即日、ゲームオーバーは無くなったけど、友達になるのすら、厳しい状況になった気がするんだけど‥‥‥。